音楽とかなんとか 雑記帳

主に感想とメモです。

Endorfin. 7th Mini Album Stories of Eveの感想

2019年秋M3にて販売されたEndorfin. 7th Album Stories of Eveの雑感です。

季節シリーズの最後を飾るアルバム! 舞台は冬! でもこれ書いているのは4月! あれ...

 

4曲収録(インスト除く)でそのうち「M:routine」と「終点前」の2曲が新曲。これが衝撃的で今までのえんどるにはなかった表現だったのでは...と。冬らしいメルヘンチックな曲から、雪が降り積もるようにじーんと重くのしかかってくる曲まで、バリエーションに富んだお二人の表現力がいかんなく発揮されています。

 

冬をテーマに、クリスマス・イブを過ごす少女たちの心情を歌ったミニアルバム 聖夜に息づく、それぞれの物語___

   

endorfin.jp

 

 

1. M:routine

 

全体2分という短い曲。これまでも「一粒ノ今」や[kaleidoscope]といった小曲はありましたが、ボーカル付きでこうした曲をアルバムの始めに入れたのはこれが初かな?その後のアルバムであるHorizon Claireでも「残光」という小曲をイントロダクションに入れていましたね。でもここでは「残光」のようなアルバム全体のモチーフを描き出すのではなく、あくまで少女たちの一人の他愛のないモーニング・ルーティンを描き出しています。作曲のデルタさんの仰るように、「冬の朝、布団にくるまって聴いてほしいです(目覚ましにするもよし)」ですね。起きれなさそうですが。

 

Endorfin.ではたまに見かける3拍子!例えば「コトノハ」は3拍子で貫かれていますね。「リフレクション」ではBメロの一部が3拍子と中々アクロバティックなことをしてきます。非えんどる曲ですが、「Deep End」(Sennzaiさん歌唱)も3拍子かな。あと「鏡像のカノン」(nayutaさん歌唱)のBメロサビとか3拍子の曲って日本人にとって難しいとか何とか言われますが、今挙げたどの曲もクオリティが高いんですよね。

 

そして編曲のセンスが抜群に高い!目覚ましの電子音で曲がスタートし、ところどころ打楽器の音がアクセントとして、曲に重奏感と可愛らしさを演出する、まさしくRaindrop Caffé Latteのように情景描写がピカイチなんですよ。それでいて破綻なく無駄なく2分に収める、こうした小曲をどんどん作ってほしいですね(願望)サビ部分のピアノの伴奏の旋律を構成するイ長調の和音が変化していくのも、メルヘンチックでよき

 

さて歌詞内容は起床→朝ごはんというまさにルーティン。「さあ 朝のルーティン」伸びやかななくるさんの歌声が印象的ですね。そしてこの主人公の心情を代弁するのは「切なく優しいポタージュ」と「きらきら光るスノードーム」。前者はポタージュの温かさが胸に染み込む一方、どこかクリスマスという「愛があふれるこんな季節」に対する現実感のなさ、それが切なさの原因なのでしょうね。後者の「スノードーム」には逆にこの主人公がその中身に対して想いを託しているようにおもえます。スノードームの中身は人形や建物、一種の理想化された「箱庭」であり、どこかその別世界に対し自分の生活を擬えるように見つめているのかなと思います。

 

アルバムのイラストはスノードームの中で兎と白紙の本を読む女の子。スノードームという舞台装置が見せるものとは... 

 

2.  white night story

 

pop'n musicに収録されていた曲ですね。full.ver公開まで結構時間かかりましたね。楽しみにしていた曲の一つです。

 

The クリスマス!って感じの曲です。跳ねるようなピチカートがクリスマスの夜って感じですね(意味不明)えんどるの音ゲー楽曲の中でもとびっきり明るくて可愛らしい曲になっています。音ゲー収録時よりもサウンドがよりクリアになっています。

 

この曲の最大の魅力はBメロですね。Endorfin.の楽曲をみるとBメロがいい役割を果たしているんですよね。思わずクラップを入れたくなるような軽快なメロディー、2番Bメロではグリッサンドが新たなアクセントとなっています。それとは対照的に「Tell me your wish」と高音響き渡るサビ、このコントラストとそれぞれ可愛らしく表現するなくるさん。本当に素敵なんですよね。

 

さて歌詞内容について、大まかな枠組みについてはEndorfin.のお二人が説明されています。

 

p.eagate.573.jp

 

ここで「つららちゃんのイメージ楽曲ということで、舞台はクリスマスイブの夜の星空、賑わう街のはるか上空に一人。若干の寂しさを覚えつつも、好きな人のことを想いながら世界中に幸せを届けて回るサンタ見習いの女の子。そんなイメージで制作しましたとありますが、もう余すところなく歌詞に詰め込まれていますね。若干の寂しさとありますが、1番2番Aメロで如実に表しつつも、「かけがえのない わたしだけの場所」と言い切るあたりサンタ見習いという特別な地位を表してるのかな。普段のえんどるでは考えられないほど強いですねこれ。「どんな夢もわたしが叶えるよ」ってねえ

 

Stories of Eveの原型となった曲かなと思います。前に作られた曲を音ゲーという文脈から離れて、新たなアルバムのコンセプトに落とし込むという器用さはやっぱりすごいですね(Alt.Stratoにおけるfour leaves等既存2曲もアルバムコンセプトにぴったりでしたね!)

 

Endorfin.史上一番メルヘンでとびっきり明るい曲です!

 

3. ガラスアゲハ

 

「Nacollection!! 2」にて9曲目に収録された曲。Vocal、作詞はなくるさん名義。ちょうど2年前の冬に公開され、去年2019年のなごりんLiveでも披露されましたね。耽美で神秘的な曲です。ポップスかロック、EDM系統の楽曲が中心のえんどるの中では一際異彩を放っています。

 

なこれ2の時よりもオケ感?(重層感)が増してバックミュージックがクリアに聴こえるようになってのかな。Stories of Eve ver.の方が好きですね。ストリングスとピアノをベースにシックな曲になっています。サウンドが一つ一つ緻密に構成されていて、ほよ〜(驚嘆)って感じです。

 

ちょうちょをモチーフとした曲自体は「monochrome butterfly」とか「ユリシス」とかありますね。前者は女の子!って感じで、後者は結構悲愴的で象徴的に「蝶」が描かれているって感じですけど。ガラスアゲハは割と「ガラスアゲハ」という存在に対して細かく緻密に語る反面、結局それは何を表象しているのかが漠然としていて、この「私」とは何なのか...

 

まず1番でガラスアゲハのモチーフが呈示されます。

 

「知らず知らず 剥がれる憧憬 まき散らして」とは何を指しているのでしょうか。まき散らす主体はBメロの「ひらり舞う 華やかな鱗粉」を考慮するとガラスアゲハそのものですが、憧憬とは何の何に対する憧れなんですかね。「完璧なものの美しさに焦がれる」というBメロのフレーズがリンクすると思いますが、考えられる憧れの方向性として

 

人間(私を含む)→ガラスアゲハ(orそれが象徴する概念)

ガラスアゲハ→他者、何らかの観念

 

となるのかな。前者ガラスアゲハと私とを分離する方向性で、後者ガラスアゲハが仮託された私と見る方向性に近づきますね。その後の「行かないで」という台詞パートも上記の解釈によって視点が揺らぐことになります。

 

「自由を求めて彷徨うガラスアゲハ 無色透明な鎧をはためかせても 柔らかい翅は全てを包み込んで 受け入れるから 心の奥深くまで塞いで」

という1番サビはラスサビでも繰り返されますが、ここもまた解釈の余地が分かれるところであります。「無色透明な鎧」という堅牢さを印象付ける表現ですが、要素的にもガラスアゲハであるのは確定です。しかし、その後の「柔らかい翅」までガラスアゲハを対象とするのは早計です。

まず、鎧というモチーフと柔らかいという表現は相反すること、次にはためかせる鎧ということからこれ自体翅であり、その後に同じ表現をだぶらせる必要はないこと、「はためかせても」という譲歩表現の後も同じ主体(ガラスアゲハ)だとちぐはぐとした文面になることから、切り離して考える方がわかりやすいです。しかし、「翅」はあくまで蝶一般のことを指している以上、そのまま人間がガラスアゲハを仕留めて包み込んだという解釈は難しそうです。

さらに第一このアルバムのコンセプトがクリスマス・イブを過ごす少女たちの心情としている以上、この曲についても主体は人間であると考えるのが合理的です。すると「monochrome butterfly」の時のような女の子がイメージとしては一番しっくりくるのではないのでしょうか*1

 

完璧なものに対する憧れ、自分のものにするためガラスアゲハを仕留めた...というのが1番の流れですかね。「自由を求めて彷徨う」という表現とも一致しますね。

 

2番でも「綺麗なまま仕留めて 移り気なショーケースへ」とより如実に上述の展開を踏まえ、かつガラスアゲハが「標本」となったことを示唆します。2番サビで出てくる「」からも連想できます。「見上げる瞳には何も映らない」とは一種の憧れのように映った、ガラスアゲハの消失を意味し、あたかも幻だったかのようにその美しさが剥がれ落ち亡くなってしまったことを示唆します。

 

そして2番サビは1番とは全く違う趣になっています。

 

「涙を忘れる事に意味がなくとも 耐えられるから 光に透かして魅せて」という部分ですが、明らかに人間を主体としています。ガラスアゲハの体躯を如実に表す1番サビとは真逆です。哀しみそのものの感情を失うということでしょうか。「光に透かして魅せて」という文言からはガラスアゲハの存在が見え隠れします。「魅せて」となっているのも示唆的でガラスアゲハを見る側が主体となっています。

 

「見えないその距離は針が決めたもの」はピンで刺され標本となりショーケースという絶対的な仕切りを引かれてしまったガラスアゲハとそれを見る主体との距離を指しているのかな。

 

非常に茫漠とした内容ですが、これまであたかも第三者目線で語られていた中で最後に「目には見えない私を 見つけてくれた 君だけ」と「私」と「君」という登場人物が現れます。

 

素直に解釈すれば「目には見えない私」ということから透明で見えない私=ガラスアゲハと比定されましょう。前述の憧れの方向性における ガラスアゲハ→他者(君)とし、ガラスアゲハに私を仮託する見方に通じそうです。

 

しかし一方で1番サビなどのモチーフから人間(私を含む)→ガラスアゲハとして語られてきたのであり、統一性を重視すると「目には見えない私」という文言の意味がガラスという比喩とは異なる方向になります。むしろ鏡のようにガラスアゲハが私の姿を映し出したという話になります。

 

結局ガラスアゲハを自分と捉えるか、君と捉えるか、視点をガラスアゲハとするのか否かで世界観がかなり異なります。その揺らぎは具体的にガラスアゲハを仕留めた意義で表出することとなり、

 

完璧なものの美しさに焦がれ仕留め上げてしまったストーリー

何者かに仕留められて標本にされてしまい君と永遠に分断されてしまったストーリー

となるのかな。

 

鏡のように見るものによって姿を変える、そんな曲のように思えます。

 

なくるさん作詞ということで、Endorfin.の中では少ない作詞が分かってる曲ですので割と詳し目に書きました。ところで「行かないで」の部分切なそうで官能的でめっちゃ好きです

 

4. 終点前

 

ラストを飾る一曲。曲調的に最初聴いたときはえんどるらしくないなと思っていました。えんどる特有のあの爽やかさや疾走感はなく、ロック方面ですと「リフレクション」がありましたが、それとは全く違う重々しいギターサウンドが雪の様にのしかかっていく、そんな曲です。

 

とはいえ聴けば聴くほどこの曲の世界観に引き込まれていく、そして歌詞の内容はまさに王道Endorfin.を体現したもので、この曲が一番好きです。間違いなく。

 

この曲の特徴は変拍子にあります。Aメロは4拍子、Bメロサビは6拍子、Cメロは9拍子?、とやりたい放題って感じです。変拍子は割とデルタさん作曲にありがち(前述M: routine参照)だけど、ここまでやるとすごいですね... それでいて楽曲としては全く違和感なく成立しているのがいいです。ロ長調からト長調への転調もまたえんどるらしくて好きです。

 

そしてなくるさんの低音Voが非常に綺麗です。ビブラートもブレスの切り方も素敵ですね。可愛い声もちょっと大人っぽい声もだせるのって本当に器用だと思います。なくるさんの歌声の魅力ってこういった部分に集約されているんですよ。高級なチョコレートを口に転がした時、あの深みのある甘さ、繊細な柔らかさ、カカオのほろ苦い風味と同じ様に。だからなくるさんのどの曲にも不思議な深みがある(多分ブレスが大きいのだと思う)。初期の曲である「Lovin' me」にも、ちょっと浮ついて音程とれてない感はあるけど、なぜか一つ一つの歌声が質感をもって表現している。「ジョーカー・パレード」や「フェイク」のような大人っぽいカッコイイ曲も、「その名はRendezvous」や「Raindrop Caffé Latte」のような可愛い曲も、「君よ」のように熱情的な曲も、「Nier monochrome」のように切なさと幻想性が備わった曲も、何の小細工もなく深みのある歌声で伸びやかに表現できる、天賦の才だと思います。

そして全く押し付けがましくないんですよね。感情的でなくて、歌詞を丁寧に染め上げていく様に歌っている感じです。だから自然と聴く人の琴線に触れて色んな感情を抱かせられるのかな。

 

話を戻して「終点前」歌詞についてはEndorfin.らしい恋のもどかしさを綴った曲です。Alt.Stratoのテーマとも似ていますね。でもどこかAlt.Stratoの曲群は回顧的な要素を含みますが、この「終点前」は恋が現在進行形で表現されています。

 

特に引き合いに出されるモチーフについて述べていきます。

 

最初の「二年後なんてまだずっと先のことだと思っていた あの日と同じ景色 仄暗い道の途中」とはどうやらこのクリスマス・イブが3度目であることを示唆します。このお話の主人公は高校生かな? 伝えそびれたまま2年の時が経過して最後のクリスマスへ、そんなことが想起されます。

なおこの曲の2年前である2017年冬は、なこれ2が発表された時ですね。確かEndorfin.秋M3に新作が間に合わなかったんだっけ? 

 

「刻まれてく 別れのカウントダウン 神様は残酷だ」という1番Aメロの歌詞からも分かる通り、我々にはなすすべもない運命を与える存在として「神様」が現れます。これは「春風ファンタジア」でも見られる表現ですが、敵役として出てくるんですよね。セカイ系らしいなと思うのは私だけかな。

 

さらに2番Bメロでは気になる表現があります。

いつか映画で見た『全てのものはいつか終わりがくるから美しい』なんて 観測者の戯言

これ、Endorfin.の由来なんですよね。(End of fin) それを作品の裏側から穿ったようになっています。確かに終わりがあるからこそ今が尊く思える、精一杯生きていこうと思える、えんどるの背後にあるのもまさにそれなんですが、もう二度とないチャンスを前にその終わりを惜しむこの曲の主人公からしたら、本当に戯言、綺麗事なんですよね。「観測者」というのも、えんどるの由来というメタ的な要素だと暴露しています。

 

サビの歌詞は報われない恋の辛さが直截に歌われています。

「君の好きな音楽も お気に入りの服も 好きな人も 恋の痛みも 全部知ってるのに 未来のことだけは まだ何もわからないまま」

相手の趣味嗜好をすべて把握していたとしても未来はわからない、音楽や服など非常に具体的に描かれ知っている分、未来はわからないことが恋のもどかしさを加速させます。

 

終わりが訪れて欲しくないという切実な心情とは裏腹にどうすることもできないもどかしさ。それが「笑うたびに辛くて ああ いっそ嫌われてしまえるなら」と自暴自棄になったり、「もしも許されるなら 世界の果てまで」と願望を抱く、でも非情な現実は痛いほどわかっていて、叶わないことはわかっていて。寄る辺のない思いを募らせながら、電車は「僕らを終点へと運んでいく」 終点前、きっと数分にも満たないモーメントをうまく切り出しているなと感じます。

 

 

Endorfin.の一つの旅路の果てともいうべきアルバムがこの次に出ました。8th Album「Horizon Claire」はもしかしたら終点「前」を踏まえたのかもしれません。

 

 

 総括

 

聖夜に息づく、それぞれの物語」がテーマですが、確かにそれぞれ別個のストーリーが短編集のように編まれています。

最後に、「スノードーム」とその中で兎と白紙の本を読む女の子は一体何なのかという問題があります。ここからは完全に憶測ですが、2019 Endorfin.というタイトルのスノードームから察するに、「Stories of Eve (イブのお話)がスノードームという舞台装置の中に描かれ、観測者たる我々視聴者が一つ一つ並べられたスノードームを眺め、その理想化された世界に思いを馳せる」ということではないのでしょうか。そのスノードームの製作者としてのEndorfin.ということで。

でも一体この女の子は何者でしょうか。ストーリーテラーなのか、もしくはこのスノードームの中のお話の主人公なのか... 

 

割と自由に書きましたが、ここらにします! 本当にEndorfin.の楽曲は一つ一つ丁寧で大好きです。ほよ〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

双子座神話から見る『Gemini Syndrome』(歌: La Prière)の構成と各楽曲の感想

双子座神話をモチーフとしたCDアルバム『Gemini Syndrome』(歌: La Prière)について、楽曲の歌詞と双子座神話との関連性や相違点を考えつつ各楽曲の感想をつらつらと書いていこうかなと思います。

 

 

 

‘πάτερ Κρονίων, τίς δὴ λύσις 

ἔσσεται πενθέων; καὶ ἐμοὶ θάνατον σὺν τῷδ᾽ ἐπίτειλον, ἄναξ.
οἴχεται τιμὰ φίλων τατωμένῳ φωτί: παῦροι δ᾽ ἐν πόνῳ πιστοὶ βροτῶν
καμάτου μεταλαμβάνειν.’

「父クロニオンよ、わたしの悲しみはどうしたら解かれるのでしょう?わたしにも、彼とともに、死を命じて下さい、主よ。

友を奪われた者にはもう譽れも何もありはしない。艱難の中で、苦労を共にしてくれる信頼できる人間はわずかしかいないのです。」

 

ピンダロス (内田次信 訳)『ピンダロス/祝勝歌集・断片集』(西洋古典叢書) より「ネメア第10祝勝歌」 p304~05

 

la-priere.tumblr.com

 

 

www.youtube.com

1.  双子座神話について

 

双子座神話は兄であるカストルの死と不死である弟のポルックスの昇天を題材としています。ただし、カストルポルックスの出自、カストルの死の原因やその後の双子の帰結については多少の相違があります。

 

ヒュギヌスの『ギリシャ神話集』では、双子の出自について、カストルはレーダーとテュンダレオスとの間に、ポルックスヘレネーと同じくゼウスの子とし、ポルックス自身はゼウスから星を受け取ったが、カストルには与えられなかったとしています。カストルの死の原因はポイベーとヒーラエイラをめぐるイーダース・リュンケウス兄弟との争いだとして、カストルがリュンケウスを殺し、イーダースが剣でカストルを殺し、そしてポルックスがイーダースを殺す。その後「ポリュデウケースは、自分の贈り物を兄弟と分かち合うことを許していただきたい」とゼウスに要求し、その結果、ウェルギリウスのアエネイスを引用し「自分が代わりに死ぬことにより、相手がよみがえる」こととなった、と書いています*1。ヒュギヌスの『天文詩』では、双子の友情の報いとしてユピテル(ゼウス)により星座とされた、としています*2

 

アポロドーロスの『ギリシャ神話』では、双子の出自についてはヒュギヌスと同じですが、カストルの死の原因について略奪した牛の分配を巡るイーダース・リュンケウス兄弟との争いとし、イーダースがカストルを殺し、ポルックスがリュンケウスを殺すものの、イーダースにより石を投げつけられポルックスは気絶、その後ゼウスの雷霆によってイーダースが殺され、そしてゼウスがポルックスを天上に連れ登った。だが、ポルックスは「カストールが死骸となっている間は不死を得ることを肯じなかったので、ゼウスは両人に一日おきに神々と人間の間にいることを許した」としています。*3

 

また、上記のローマ人作家以前にも、ホメロスの『オデュッセイア』では、双子はレーダーとテュンダレオスとの間に生まれたとされ、「ものみなに命を授ける大地が、生きながら二人を蔽っている。二人は地下にありながら、ゼウスから特権を与えられ、一日ごとに交る替る生きては死ぬことを繰り返す。二人は神々と同じ特権に与っているのだ」と伝えています。*4 最初に引用したピンダロスも「ネメア祝勝歌 10」にて、この双子神話に言及しています。

 

いずれにせよ双子の中カストルが死ぬこと、ポルックスがゼウスに嘆願することはどの神話においても変わらないですね。ポルックスはその不死を分かつことになりますが、その結果として天界と地上を交互に行き来するか、天界の星となるかという差異はあるものの、神たるゼウスにより報われている点では、どの神話でも軌を一にしているといえます。*5

 

2. Gemini Syndromeにおける神話の再解釈と構造

 

1.で確認したような神話の共通項-カストルの死、ポルックスの神への嘆願、そして救済-はGemini Syndromeでも変わらないです。

 

しかし、神話で示すようなイーダース・リュンケウス兄弟との争いは語られず、イーダース殺害といった復讐の要素も削ぎ落とされています。カストルの死から物語が始まるのです。

また、重要な転換として、カストルポルックスギリシャ神話には全く由来しない悪魔(カストル)と天使(ポルックス)に置き換え、善悪という人間内部にある倫理的判断を組み込むといった点があります。ただし、単純な正義と悪といった勧善懲悪の構図にもなっていません。

加えて、カストルと神の心情がポルックスのそれと同じように描かれている点も元の神話にはない要素です。双子の人間的要素、作品のキーワードである「祈り」が強調され、兄弟愛(姉妹愛?) の勝利という近代的価値観が押し出された形となっています。ストーリー上は双子座神話をなぞりつつも、キャラクター性や神話劇を構成する要素についてはギリシャ神話の世界観からは隔絶していますね。

 

・triune Castor

 

アルバムのプレリュード。意味としては三位一体のカストル? 今作の3人のことかな。

時計台の針が動くような音、そして物悲しげなハープの旋律と、次の曲のフレーズを歌うストリングスが星座の世界の神秘性を形成して優美な曲になってます。

 

 

・永訣のGemini

 

「誰にも語られぬ神話 破滅を歌えば 否めよ 永訣の宿命」

 

この衝撃的な歌詞で物語が始まり、双子、神の3つにパートに分かれそれぞれの心情、独白、世界観の呈示がなされています。

 

「天の采配」「罪」「罰」といったワードが神パートに見られますが、これこそギリシャ神話にも全く触れられていない部分です。ただ、何に対する「罪」であるかは明らかにされていないです。また、表象においては天使と悪魔であるものの、その性質は明らかになっていません。あくまで星座神話という一つの救済の物語が筋であるため、悪といったこれと矛盾する要素は排斥されたのかなと思います。そっちの方が感情移入しやすいですしね。

 

天使と悪魔のパートは、特にBメロにおける歌詞がそれぞれ対になっているところがあります。(例えば「たとえこの身が朽ち果てようと」(悪魔パート)「たとえ奈落に堕ち果てようと」(天使パート)) 対句を挟むことで、サビをより一段と盛り上げる効果を演出しているの、こういうトリプルボーカルの曲だからこそできる技ですよね。

 

なお天使パート自体も「純黒の翼 あなたにはそぐわない」「純白の翼 私にはそぐわない」と対となる表現があり、天使と悪魔の本作のキャラクター性が窺えます。この「科せられた約定」と双子を引き裂いた運命に対する悲哀と、堕ちた悪魔に対する救済を願う、そういった天使の姿が描かれています。ギリシャ神話では死んだカストルは何も語りませんが、この作品では死者でありつつもパートが割かれ、その苦しみが語られるなど、ストーリー上、双子間の関係は同列であることが強調されてますね。

 

アルバム全体を貫くテーマを呈示するもう一つのポイントとして、神と双子との関係性があります。双子が「祈りの歌」、「愛の旋律」を響かせることで神の慈悲を求める、そのような意味では神への嘆願と救済が描かれていますが、一方で不条理な現実と「天の采配」による裁きへの命を賭けた抵抗という神に対する叛逆も描かれています。

 

この点は「罪に罰を 救いの手を 相反する真実」という歌詞にも表現される通り、祈られる対象と裁きを与える主体を同一視することによる相反した神のイメージ、それに対する双子の心情の矛盾が表出されています。この矛盾の帰結は「自分が代わりに死ぬことにより、相手がよみがえる」、すなわち天使の不死性が消滅する(星となる)ことであり、二人とも生き返るという筋書きではないです。歌を紡ぐこと、祈ること、それ自体は近代的ですけど、その対価、「命灯」を差し出すことは生贄を媒介とし生命の復活を願う古代的儀式要素をかすかに醸し出しています。

 

曲の構成や進行は何年か前のelements gardenを想起させるようでめちゃくちゃエモいです。かそかそさん、ジャズ系の曲のイメージが強かったので、結構衝撃を受けました。AメロBメロサビ全てドラマチックに進行してこの1曲だけでもお腹いっぱいになってしまうほど、動機付けとしてはこれ以上ないくらい劇的で格好いいです。

 

何よりもいつきさんの作詞がすごい素敵で心を揺り動かされました。厨二病感満載ながらも分かたれた天使と悪魔の悲哀、恋慕を1番と2番で対句的に打ち出し、強力なワードと的確なパート分けで紡ぎ出していて、綺麗だなあって思います。難産だった理由もわかります。何より2番の歌詞が本当に心揺さぶられますよね。 

 

先だった悪魔を切なく、耽美に表現するnayutaさん、先立たれた天使の悲哀と恋慕に燃える魂をパワフルに表現するなくるさん、そしてキリッとした、ハイトーンボイスでこの曲の世界観全てを貫くロリ神様いつきさん、三者三様個性的でエモーショナルで素晴らしかったです。表現力に圧倒されてこの時点で泣いてました。

 

・君よ

 

天使ソロ、正直一番楽しみにしていた曲です! 作曲がRewriteなどで担当されてた塚越さんと聞いてめちゃくちゃ喜びました。ゴシック系の曲って、絶対なくるさんと相性ええやん、って勝手にいつかコラボないかなぁと期待してたら現実になりました。ありがとうございます。

 

電子音を混ぜたオペラ調の曲って感じです。この曲だけ、一人称我や古風な言い切りを用い、ギリシャ神話の武人的イメージが維持されているのかな。戦争を背景として失った「君」への哀悼を謳いあげます。

 

Aメロの1番と2番では「君」への語りかけで始まります。「運命に抗いし者よ」として「永訣のGemini」から引き継がれた宿命への対抗が繰り返されます。そして、彼らの世界とは「月さえも解らぬ」「数多 現し世の闇」であり、清く輝く「君」と明確な対比関係になっています。そして凄惨たる現実こそが彼らの克己心の源であるのかな?

 

Bメロの1番と2番

・「我はいざ行かん 両の手には 大地を焼く業火も この身焦がせはしない」(1番)

・「何故生まれた 無に帰すまで 燃やし尽くせ 今は 神の御許を目指せ」(2番)

から、己を焼き焦がすことのできない、戦火などの外部からの火、そして双子の奪還に燃える己の内部からの火(克己心)が対比されています。

 

そしてサビ1番、2番では「君」と「神」に対して呼びかけます。

・「あゝ、君よ 星となりて 愚かしさを憂うのだろう 尚も戦は続いてゆく」

・「あゝ、神よ 今一度の、今一度の慈悲をどうか 差し出そう 我がすべてを 望郷の彼方に 微笑むαγαπημένοι」*6

 

この曲全体を貫くのは「君」に対する追慕であり、「我」の独白です。穢れた世界に染まらず気高きままに、白きままに、無垢なる儘であってほしいという、悲哀に満ちた願いです。

 

そして感動をさらに深めるのが、なくるさんの清澄な歌声です。特に「君よ 君よ 君よ」のリフレインや2番の「我は今も未だ ここにいる」の突然のファルセットがドキってきます。ビブラートの使い方が上手くなったなあ、表現力が上がったなあと感じます。楽曲の魅力をさらに奥の深いところまで引き出されているので、そのパワーに圧倒されます。

 

荘厳なコーラス含めて格調高く、メッセージ性の高い曲です。fullを聞いて一番好きな曲です。

 

・鏡像のカノン

 

endorfin.の作曲のsky_deltaさんとnayutaさんの楽曲。雰囲気的にはえんどるの海月やコトノハに似てるかな?星屑のように美しい歌詞を一つ一つの意味内容を正確に、丁寧に、歌い紡ぐnayutaさん、本当に感動しました、、目の前に有り有りと星巡りの情景が浮かび上がります

 

切ないバラード系で自分が大好きなピアノ中心、2番のサビから入るギターサウンドが素敵、そして畳み掛けるように転調、えんどるらしさ全開って感じです。コーラスもしっかりと引き立てています。

 

「君よ」と同じく「君」に対する、つまり悪魔の天使に対する思慕を謳い上げています。タイトルの鏡像は双子を表しますが、同時に鏡で分かたれている以上触れることのできない存在であることの暗示であり、また、カノンは同じ旋律を異なる時点から開始する曲形式であり、同じことを思っているはずだがどこかずれてしまっている、そのような双子の心情を指しているのでしょうか。歌詞にある「光失くした影」は影、つまり悪魔を主体とし光(天使)を失った哀しみを示しています。光と影というモチーフは次曲「Atonement Twins」でも繰り返されます。

 

また、

・「宿命に この身差し出そう いつの日か 君に逢えるなら」(サビ部分)

から、宿命(采配 裁き)に対する悪魔の態度が見られ、

・「揺るぎない この想いでさえ いつの日か 塵に還るなら 此処に在ることの意味は何?」(2番サビ)

は上述の「君よ」の2番Bメロの歌詞との関連性をほのめかしています。

 

・Atonement Twins

  

神によるソロパートです。「贖いの双子」というわけで各所に原罪や罰といった内容や、逆に救済が編み込まれています。Feryquitousさんらしい複雑でポストモダンで、でも無機質な激情を孕んだ曲ですね。

 

かなり歌詞が複雑ですので誰視点かで考えます。すると、曲全体でその視点が揺らいでいることがわかります。「有限 欲するならば 与えよう」は、上記のギリシャ神話に共通するポルックスの不死を分かつという要素を踏まえた歌詞ですが、これは双子の願いに対する神の返答であり、神視点と解せられます。一方で「如何にして 私達の選択は 間違いじゃない筈だ」の私達は天使と悪魔であり、彼らの視点で語られてます。

さらに、この曲の中で繰り返される歌詞として「引き剥がされた双対は 光と陰 永久と分かつ どうか 一矢省みぬ罰で 水底の君を救い給へ」とありますが、救い給へという記述からこれも双子視点であると思われます。

 

また、「罰」で「救う」という矛盾した要素は前述の「永訣のGemini」を踏襲しています。全体として判然としない曲であるが、少なくとも神の視点を要素に入れていることから、「祈り」という儀式秘儀的なものを意識したものではないでしょうか。双子の慟哭たる「君よ」と「鏡像のカノン、双子の天界での再会を描く「それは世界を越えて」の空隙を埋める役割を果たしているのかな。

 

セリフ部分含め緊張感が冴え渡り、神の貫禄たっぷりないつきさんの歌いっぷりは、今までに無かったので新鮮でした。そういえば「永訣のGemini」も「それは世界を越えて」も神(=いつきさん)パートから始まるんですよね。夜空を劈くようないつきさんの声が、またこの物語の壮大な風景を想起させます。可愛い曲も格好いい曲(As you wish, My ladyのようなのも含め)も増えるといいなぁ

 

・それは世界を越えて

 

「永訣のGemini」と同じくトリプルボーカルであり、双子の祈りや願いが叶えられ、天界に輝く星々となる-双子座神話のクライマックスを飾る曲です。アルバム内のどの曲よりも歌詞が劇の台詞のようになっていて、独白ではなく双子・神との掛け合いを中心とした構成となっています。その関係性上、歌詞の引用を多くします。(便宜上神パートについてはイタリック)

 

楽曲の構成については、

・1番(AメロBメロサビ):主に悪魔と神 →以下(ⅰ)

・2番(AメロB’メロサビ):天使と神との掛け合い→以下(ⅱ)

・Cメロ、サビ、転調サビ:3者の掛け合い→以下(ⅲ)

・コーダ:全員による合唱→以下(ⅳ)と表記

 となっております。

 

まず(ⅰ)では悪魔(カストル)と神とのやりとりが描かれます。

 

Aメロでは、

「私の祈り もしそれが叶うのなら この声どうかあなたに届けばいいと思う」(悪魔パート)

限りなく心優しき悪魔の声」(神パート)

として、やはり「悪魔」とは単なるキャラ上の問題であることを示唆します。また、同じような構文が(ⅱ)でも表されます。

 

そしてサビでは、

「それが世界を越えて貴女に届くものと__ 」(悪魔パート)

それが只の空想だとして」(神パート)

「 _でも祈るなら! そう何も出来ないこんな私だけれど」(悪魔パート)

と折重なり、言葉でもなく、「祈り」こそが貴女に思いを伝える唯一の方法だとしています。それに反応するように

「あなたの祈りは届いているの」(天使パート)で1番は終わります。

 

一方、天使と神との掛け合いを描く(ⅱ)では(ⅰ)を踏襲しつつ、

声だけでは何も変えられない」(神パート)

とし、それに対して、

「声だけでなくもう一度貴女に逢いたい」(天使パート)

とその姿を要求します。それに対する神の返答

命堕とした悪魔に 如何にして逢えるものか__?」(神パート)に対し、

「この身の命が枷ならばそれさえも投げ捨ててもいい」(天使パート)

と答えます。

ここで双子座神話の核心たる「自分が代わりに死ぬことにより、相手がよみがえる」というモチーフが表出します。不死の肉体を棄てる覚悟が心に響きます。そしてサビ部分は1番と完全に対になっています。

 

祈る死者と願う生者、この用語の差異はわからないものの、(生者の方が多少俗っぽい感じはしますが。)対比構造がしっかりとしているので、頭にすっと話が入りやすいですね。

 

(ⅲ)ではこの天使の態度につき、

心優しき堕した悪魔に 全てを擲つ不死のものなど」(神パート)

とし、ここで天使(ポルックス)の不死性が神話から引用されています。対して、

 

「だからこそ希うのです! 希うのです!!」

 

との双子の力強い返答。この楽曲の盛り上がるポイントの一つです。

非科学的な「祈り」が前景化した例といえば、「Mother 2」が当たります。人間が極限状態に追い込まれた時、最後に残された倫理的態度こそが「祈り」なのでしょう。

 

これにより遂に

ならば今 その祈りを その願いを 聞き届けよう それが世界を越えて響かせるものならば」(神パート)

とする条件の提示を踏まえつつ双子の返答

「私たちの願い(祈り)はけして 終わらない」

そして、

__そうだ けして離れぬように 共に居るがいい」(神パート)

「いつまでも手を取り合って」(合唱)    

祈り(願い)が届き叶うこととなります。

「それが世界を越えて響く」の「それ」とは願い(祈り)を指しますが、具体的に響くという述語を入れていることから、「願い(祈り)を歌う」という要素が組み込まれていると思われます。まさにオルフェーオ等のオペラであるような、恋人に対する愛を歌うことで冥界の番人を説得するというプロットと類似した近代劇の定番がここで表出されます。「歌」の力は万能なんですね。

 

願い叶ってから、新たな要素が提示され、

「そう全ての祈りはけして無駄にならない」(悪魔パート) 

「それを聞くものが居る限りには__!」(合唱)

とし、「聞く他者」の存在を強調します。これは歌詞の文脈上双子の片割れを指すと解せますが、例えば神といった双子の外縁にいる存在(=我々星を眺める人間)も含まれるとの解釈も可能です。

 

最後の(ⅳ)では、3人全員による合唱であり、ナレーターのような視点に切り替わっています。「祈り願う 数多のおもい全て 聞き届ける 双子の星となって」からは、(ⅲ)の最後の「それを聞くもの」と繋がり、祈り願う主体たる双子から、それを聞く客体たる双子への転換が想起されます。*7

 

トリプルボーカル曲で歌詞も構成もしっかりとしていて物語の帰結、神に祈り願い、隣の星として天に昇るまでがミュージカルのように展開していて、5分半以上、壮大な曲です。 特に(ⅲ)のラスサビの転調、(ⅳ)のコーダが本当にクライマックスって感じで盛り上がります。まるで一つの神話が目の前で繰り広げられているように。

 

・Quand on prie la bonne étoile

 

この神話劇の最後を飾る曲。意味は「輝く星に願いをかければ」。豊かなピアノとストリングスの旋律で星巡りを表現しています。そして途中から「それは世界を越えて」のラストの旋律をストリングスが奏でながら一気に加速し、大団円へ。このアルバムが自分にとって初RD-Soundsさんでしたが、本当にはまりました。

 

最後に

 

コミケ始発で行けばよかった、、、(限定セット買えなかった勢) 自分は祈りの深さが足りなかったということで、、

歌詞カードも物凄くデザインが凝っていて見てて飽きないのも素敵ですよね。星座とか好きなので一瞬で心を持ってかれました💫 歌詞パートも色で分けられていて聞き取りやすい。

 

特にこの12月は双子座流星群で盛り上がったこともあり、結構タイムリーなアルバムなのかなって思います。1曲1曲の完成度がめっちゃ高いのでおすすめです。

 

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(歌ってる方々 虚無芸人 天然サイコパス 社畜ってマジ?)

*1:ヒュギヌス (松田治 青山照男 訳)『ギリシャ神話集』(講談社学術文庫) p.125~127 なお『アエネイス』引用部分は6巻 121行目

*2:ふたご座 http://www.kotenmon.com/hyginus/twin.htm

*3:アポロドーロス (高津春繁 訳)『ギリシャ神話』(岩波文庫) p.152 p.154~155 

*4:ホメロス (松平千秋 訳)『オデュッセイア <上>』(岩波文庫) 11歌 p. 291

*5:また参考としてTheoi Project DIOSKOUROI https://www.theoi.com/Ouranios/Dioskouroi.html

*6:αγαπημένοιだと主格男性複数系であり、単数系のαγαπημένοςの方がふさわしい。メロディーをはっきりさせるため敢えて母音で終わる複数系を選択したか。なお、agaméniと発音しているとしか聞き取れず、これに値するギリシャ語は不明。

*7:なお歌詞カードには記載されていないが、仏語詩が語られている。Tu t’entends toute (la) prièreだと思われる。

Endorfin. 8th Album Horizon Claire の雑感

Endorfin. 8th album 「Horizon Claire」の雑感です。Horizon noteで知った人間からしたらそのアンサーアルバムが出るのは本当に嬉しい限りです。Endorfin.に出逢ってから、同人イベントへ参加するようになったんだなって。(実は2年前と最近なんですが) ティザームービーが公開されて、ああ「節目」なんだなって思い起こしてくれるようなタイトルです。

 

ジャケットの風景もHorizon noteそのまま、紙吹雪を飛ばしている姿はどこか象徴的ですよね。Horizon noteは中心に噴水が描かれていますが、今回は鐘🔔。新たな始まりを告げるってことかな。天を仰ぐ姿は遠い過去や未来に思いを託しているようです。

 

死ぬ日まで天を仰ぎ、一点の恥じ入ることもないことを、葉あいにおきる風にさえ、私は思い煩った。星を歌う心で、すべての絶え入るものをいとおしまねば、そして私に与えられた道を、歩いていかねば。

 今夜も星がかすれて泣いている

 

『空と風と星と詩』 尹東柱 (金時鐘 訳)

 

www.youtube.com

 

 

1.   残光

 

「一粒ノ今」のように全編台詞パートの曲です。今作のintroductionって感じですね!

 

「歩く 歩く」「廻る 廻る」催眠音声のようなリフレインを踏まえながらどこかの「君」を、その残光を探し求める、神秘的な曲です。

 

「春に夢を見て」

→3rd. Raindrop caffé latte(春風ファンタジア)

「夏の切なさと」

→4th. Alt.Strato

「秋の温もりと」

→5th. 純情ティータイム

「冬の静けさ」

→7th. Stories of Eve

 

各季節で描かれた世界観が再度呈示され、「季節は巡り、またこの場所へ」。いよいよ君への追慕の旅も終わりか、そう考えるとStories of Eveの最後を飾る曲が「終点前」というのはこのアルバムの伏線だったのでしょうね。そんなことを意識してしまう。

 

「変わってしまったのはこの場所か それとも」かつてと違って見えるのは、何か大切な人と過ごした記憶が結びついて場所というのは存在しているから。その人を見失った今、色褪せて見えることもありましょう。建物も道路も、かつてと変わらなくても。そして大人になるにつれて、過ごした世界がちっぽけな箱庭に見えてしまう。自分が変わってしまうことで失うものもあるのかな。

 

Horizon noteから4年、万感の思いを込めたあてのない旅路の果てに何が待っているのか。幾多の星々を廻り、巡り続けた先、まるで秒速5センチメートルの様な世界観、その終幕が始まる。


2. ミントブルーガール

 

Endorfin.の初期を彷彿とさせる、海を背景とした爽やかな曲です!イントロ部分のリフレインも気持ちいい、、、スキップしたくなるような曲調

 

特になくるさんの声の表現の幅が広い!Aメロの跳ねるような可愛らしい歌い方、落ちサビの甘酸っぱく切ない歌い方、1曲の中にこれだけ魅力がぎゅっと詰まっていてこれだけでお腹いっぱいになってしまう。

 

「はじまりの予感」えんどるの始まりであるHorizon noteのジャケットに描かれた風景と同じ街かな。「風にのってふわり どこまでも」horizon noteのキャッチコピーと同じく「ミントブルーの帆風」にのって境界線の向こうまで。時が巻き戻ったような感じですね。そして風のイメージは「君」の残り香を意識させます(桜色プリズム)

 

「綺麗なままで終わりたい」「最高の今を生きていたい 魔法解けるまで」刹那的でえんどるらしい終末の美学はそのままに、炭酸水を飲み干した時のあの泡が口いっぱい広がって消えてゆくような。明るさと切なさがいい塩梅で混在している、そんな曲ですね。

 


3. floating outsider

 

「何処へfloating, outsider」が印象的な曲。

 

多分このアルバムで一番歌詞が難解? 「不溶性の僕」を主体として、自分だけが世界の意思(水の中)に組み込まれず(溶けず)、また「僕の空白」=何者になるかわからない未来をバイナリ(2進数)たる世界が乖離させ、今のまま自分を固定化させる(それが「影を照らす」ことかな)。そんな「汚れた水槽」でもがき苦しむような曲ですかね。

 

「誰かの波長」をなぞることでこの苦しみから逃れる、その誰かとは一体... 「君」だとしたら僕と同じく不溶性なのかもしれません。

シャーデンフロイデ」はまさしくこの世界そのものでもあり、同時にこの僕でもあるんですかね。世界から浮いてる、苦しんでるなんて馬鹿な奴だな的な

 

曲調はLOST IDEAの「ユリシス」に似てるかな。なくるさんの歌い方もそれに近い。

ラスサビ前のピアノパートがすごく綺麗。えんどるの楽曲ピアノの旋律をあざとく使ってくるから本当最高 神

 


4. innocent truth

 

待望のfull!音ゲー歓喜! dispelの時もそうだけどfullになってさらに化ける曲すごくないか??

 

「祈りは絶望を映し出すmirror」「希望は絶望を映し出す未来」中々強いワードが並んで最高にカッコいい。明=暗という構造、希望を持つためにはその分絶望を知らねばならないというスタンスですかね。現実から離れた理想家なぞ存在しない的な。「生を受け咲いた花はいつもその意味も知らない」=花を咲かせるためにはその分の生を吸い取る(つまり他を枯らす)ことが必然であるけど、何もわかっていない(生存者バイアスのような) 花のように無垢なる真実ではなく、剥き出しの真実を掴んで進め!てことでしょうか。

 

「誓い」という要素を噛ませるあたり、この曲もLOST IDEAのLΦST IDEAやdispelを意識しているのかな。Luminous Rageから続くかっこいいえんどるの軌跡が見られます。

 

全盛期のI’ve(PSI Missingとか)のような、あの頃のアニソンを彷彿とさせます。特にBメロの重厚感が禁書目録のOP等を想起させます。何だか懐かしい記憶を呼び覚ますような曲だなって思いました。昔、horizon noteの時かな?fripsideやI'veが好きな人やエロゲソングが好きな人はendorfin.にハマるって言ってた方がいましたけど、まさにそれですね。ただ音ゲーらしい疾走感もバリバリ生かされていて、聴き終わった時のカタルシスはアルバムの中でも随一。endorfin.が愛される所以ですね。

 

ライブとかで絶対に盛り上がる(確信)

 


5. Fatalism

 

えんどるEDM!えんどるのEDMってアルバムにはあまり収録されてないけど、MEGAREXなどによく楽曲提供されてますもんね。確かかなり前の曲だったっけ。サビ前のアレンジがすごいお洒落で印象に残ってた曲でした。まさかこのアルバムでまた巡り合うなんて、、、今までEDMに苦手意識のあったんですけど、デルタさん作曲の楽曲で段々と良さがわかってきたような


6. 彗星のパラソル

 

クロスフェードで聴いてて非常に好きになった曲。正直このアルバムで一番好きって言っても過言ではないほど、心にグッときました。

 

four leavesにかなり似ているなというのが第一印象。そういえばAlt.Stratoの前の曲でしたよね。彗星のパラソルも同じく表題曲の前。「言葉にすれば消えてしまいそうなくらい 不明瞭な僕」「曖昧な世界」(four leaves より)は彗星のパラソルにも繋がるのでは? そして天体をモチーフとするのはhorizon noteのspicaに通づるものがあります。

 

何にもなれないままで消えてしまうのがただ怖くて」ある種モラトリアムを彷徨う私のような人間には本当にグッ刺さる歌詞です。幼い日への憧憬、まだ何にでもなれると思っていた頃の自分、そして現実には何者にもなれなかった。成長すると単純なことさえも忘れてしまう。

届かないものほど 涙が出るほど愛しい」失った挙句何にもなれなかった不甲斐ない自分に慟哭する。彗星、お前も私と同じく孤独なのか、と。

 

青年期の苦しみを天体に託した好きな詩があって、それを思い出しました。

 

いずこへ行けばいいのか。東がどこで、西は、南は、北はどこなのか。おっとっと! ちらっと星が流れる。隕石が墜ちたところがどうやら私の行くべきところのようだ。そうだとすれば隕石よ! 墜ちるべきところへ、必ず墜ちてくれなくてはならない。

「隕石の墜ちたところ」尹東柱  (金時鐘 訳)

 


7. Horizon Claire

 

Horizon noteのアンサーソング。1stアルバムから4年間紡いできた旅路がここに集約されています。

 

他の方の指摘でもあったように今までのえんどるの楽曲がモチーフとなってるのかな。

 

・「鼻先を掠めた記憶を纏う春風」

→春風ファンタジア「頬を掠める春風がどこか懐かしくて振り向いた 」

 ここでも風が君を思い出すトリガーとなってる?

 

・「言葉だけじゃ埋められない その温度で」

→桜色プリズム「言葉じゃ言い表せない だからこそSingin' 」

→four leaves「忘れないように歌い続けよう」

と繋がり今までのえんどるの楽曲を踏まえているのかなって感じがしました。

 

何よりHorizon noteとの対比として

 

・「いつまでも君の隣じゃいられないよね」

→「隣寄り添える私になれたのかな」へ、

・「もういちど君の隣で笑えるなら」

→「キミが微笑んで そしたら笑い返すから」

という一歩踏み出した形になり、4年という歳月の中での変化を印象付けます。

 

・「変わってゆくもの 変わらないもの 季節巡っても 解けた糸はまあ結いなおせばいい」

→各アルバムで繰り返された君に対する自己逡巡の答えが出されます。バラバラになったものもいつかは元どおりになる。茫漠としててもいい、思いを結晶化しなくても、その「形ない想い」こそが君への手がかりだったんですね。

 

楽曲の構成ですが、伸びやかなサビのメロディと軽快なBメロとの対比がものすごくうまい。「white night story」でもそうですが、えんどるはBメロが本当に素敵。楽曲のイメージをより深く掘り下げ、複雑さを織り込んでいく。そしてサビをわっと際立たせるところがにくいですね。

 

そしてこの曲を起点として止まった物語が再度紡がれていく。新たな旅路の始まりを予感させます。

 

自分がHorizon noteを最初に聴いた時の感動、あのなくるさんのファルセットの美しさが、そしてえんどるを追いかけ続けた季節が、メガ博で初めてendorfin.のライブを見たときの胸の鼓動が、心斎橋を小躍りしながら帰ったあの時が、全てが走馬灯のように駆け巡りました。「記憶の端で」「いつかの音」が、ずっと響いています。

 

総括

endorfin.の楽曲に出てくる「キミ」とは何者でしょうか。夏と冬のアルバムでは多分結ばれなかった恋人ないし大切な誰かだと思われます。Alt.Stratoは幼少期を描く「Cornus Florida」、青少年期のもどかしさを描く「リフレクション」、伝えられない恋心を花火に託した「泡沫の灯火」そして今作の「彗星のパラソル」で意識されているであろう「four leaves」、もうあの時には戻れない、残酷な現実と残ってしまった君への恋心を歌う表題曲「Alt.Strato」で構成され、どの曲も明確な記憶の中の他者を意識しています。またStories of Eveの「終点前」でも、「君」の趣味嗜好が書かれ、明確な他者の存在を意識しています。

 

だけど、もしかしたら今作は「決別してしまった自分自身」が「キミ」かもしれません。

 

何かを決断するためには過去の自分を裏切ることもある。夢を諦めることで夢を追いかけ続けたかつての自分に背を向ける。もしその決断が正しいならまだしも、間違いだったら?過去だけが未来を裁けるのであって、未来は過去を裁き得ない。過去の自分に後ろ指を指されることになる。それに対する倫理的態度が、自分を過去への憧憬に苛まれ孤独になった自分を責め立てる。

 

思えば先ほど挙げたendorfin.の楽曲って「出来事が起こった後」なんですよ。回顧的に当時を振るかえって自分を慰めるか、諦めるか、責め立てるか、宛先のない手紙を書くようにその感情を歌う。例えば「Horizon note」は開口一番「君はどんな色を見てるの? その瞳はどんな僕映しているのかな」。過去に何か二人の間に起こったことを強く示唆します。そして君といたい、何度も言葉で繰り返しているのに、肝心の君は目の前にいない、いたとしても君には伝えられない、終いには一緒に居たくない。そんなもどかしさの中で逡巡しています。

 

ある意味そういう自分への決別こそがこの旅路の終着点なのでしょう。その結果としてもしかしたら・・・思い人たる「君」と出会い、過去の自分である「君」に報いることができる。「時を越えてまたここで巡り逢う」とはそういう意味を含んでいるのではないでしょうか。

 

でもそういう嘘偽りなく真っ直ぐに、言葉を紡ぐ態度がendorfin.の良さでもあるんですよね。女々しいと思われるかもしれないけれど、ものすごく倫理的で、正直で。誰でも過去の自分を振り返ることはあると思います。今と比べたら何もかも輝いていたのかもしれません。今の自分に違和感や劣等感を感じるかもしれません。でも過去は書き換えられないし、今を必死に生きなければ暗澹たる人生のまま。そういった割り切ることのできない思いを丁寧に拾い上げていく。それがendorfin.なのかなと。

 

そんな歌詞とともに鮮やかなサウンドと、甘々で聞く人の心の色を滲ませ掬い上げる、そんななくるさんの歌声で表現されたendorfin.の作品。押し付けがましくもなく、完全に悲観的であるわけでもなく、ただ色々な記憶を背負った我々の琴線に触れ、あるがままに肯定させてくれる。そんなえんどるが本当に大好きです。

 

 

Ce qui n’est pas 'claire', n’est pas L’endorfin!

 

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カルペ・ディエムの元ネタとか

「風が連れてくるよ カルペディエム」(bloomy! アルストロメリア)

 

カルペディエム(carpe diem)とは「今日という花を摘め」というラテン語の名文句です。ホラティウス『カルミナ』第1巻11歌が元ネタです。

 

原詩はこちら

 

Tu ne quaesieris, scire nefas, quem mihi, quem tibi
finem di dederint, Leuconoe, nec Babylonios
temptaris numeros. ut melius, quidquid erit, pati.
seu pluris hiemes seu tribuit Iuppiter ultimam,
quae nunc oppositis debilitat pumicibus mare
Tyrrhenum. Sapias, vina liques et spatio brevi
spem longam reseces. dum loquimur, fugerit invida
aetas: carpe diem, quam minimum credula postero.

 

 

wikiにあった英訳も貼り付けておきます。J. Coningtonによるものです。

 

Ask not ('tis forbidden knowledge), what our destined term of years,
Mine and yours; nor scan the tables of your Babylonish seers.
Better far to bear the future, my Leuconoe, like the past,
Whether Jove has many winters yet to give, or this our last;
This, that makes the Tyrrhene billows spend their strength against the shore.
Strain your wine and prove your wisdom; life is short; should hope be more?
In the moment of our talking, envious time has ebb'd away.
Seize the present; trust tomorrow e'en as little as you may.

 

こっちもまたwikiより。直訳風かな?

 

You should not ask, it is unholy to know, for me or for you
what end the gods have given, O Leuconoe, nor Babylonian
calculations attempt. How much better it is whatever will be to endure,
whether more winters Jupiter has allotted or the last,
which now weakens against opposing rocks the sea
Tyrrhenian: be wise, strain your wines, and because of brief life
cut short long-term hopes. While we are speaking, envious will have fled
a lifetime: seize the day, as little as possible trusting the future.

 

などなど。実際ラテン語の詩って語順がかなりごちゃごちゃしているため、正確な訳を入れるのは無理そう。ラテン語は中世のやつしか殆ど触れたことがないので、あんま変なことは言えないんですけど、scire nefasの訳出とか英訳でも難しそう(小並感)

 

特にcarpe<carpoの訳出だけどseize(掴む)となっています。「今日を掴め」っていいですよね。勿論carpoには花や果物を掴むという意味合いが込められているから「今日という花を摘め」っていうのもかっこいいですよね。

 

 なお日本語訳としては鈴木一郎氏のものがあります。(『ホラティウス全集』p.309~310)

 

尋ねるなかれ、知ることは

不可能だから、レウコノエ。

天なる神が、君や僕に

どういう結末を与えるかは、

わからないのだ。バビロンの

占星術にも手を出すな。

ものごとは皆、成り行きに

任せるがいい。ユピテル

多くの冬をもたらしたし、

今年の冬もやって来て、

テュレニア海に対置する

海辺の(軽石)でその波を

静めてくれることだろう。

頭を使え、ワインでも

絞っているんだ。人生は

短い。大きな望みなど

捨ててしまった方がいい。

こうして喋っている中にも

容赦なく、時は過ぎて行く。

この日を楽しめ。明日の日は

どうなることか分からぬから。

 

簡潔で綺麗な訳出だなあって思います。 quam minimum credula posteroのcredula(信用するような)の部分をきっぱり分からないと訳出されてたり全体的に日本語として変になるところは割り切って簡単な語にするのが詩ではリズム的に大事なのかな。

 

アルストロメリアのbloomy!だけど「風」というモチーフはこの詩ともかぶるかな。ユピテルがもたらした云々のところとか。でも元ネタのホラティウスの詩では季節は冬、bloomy!とは季節感が若干違うんですよね。冬を乗り越えた先のbloomyとして考えると原詩とbloomy!とかなり重なるのでは?とも感じます。

他のアルストロメリアの曲もこのような言葉遊びや西洋文学由来の元ネタが存在するので調べたりすると面白いですよね。

 

 

半年ぶりの更新

気がついたら最後のブログ更新から半年以上経ってますね。これ。

 

確かメガ博帰りの新幹線とかでちまちま書いていたんだっけな。よくLΦST-IDEA聴いて

いた頃だ。大阪まで行って、お目当てだったendorfin.の生歌聴けて、時が過ぎるのが惜

しいくらい濃密な40分間で。Horizon note、raindrop caffe latte、桜色プリズム、などな

どのオンパレードで会場は多いに盛り上がった。人の少ない心斎橋を小躍りしながらハ

ンバーグ店に寄って、そして予約してた北浜のホテルに向かったんだった。

 

のちにライブの様子をレポートとイラストをツイッターに上げてる方がいらっしゃっ

た。自分が見た景色と同じだった。可愛らしいCDジャケットのキャラクターが、その

時の衣装を身にまとったイラスト。色々な都合で、キャラクターにその姿を仮託したの

だろう。

 

ただ私にはまさしくそのキャラが目の前で歌っていた。2次元と3次元は違うというだろ

う。そうであっても私が見たのは彼女だったと思う。そう思いたい。

 

自分は絵が描けなくて、ライブの様子も具に記憶しているわけでもなくて、その時の感

情を克明に書き現わすこともできない。細かいところまでは覚えておく必要もそこまで

ないような、そんな気もするけど、言葉にしなければ、記録しなければ、その事実も付

随する諸々の評価も、時間の渦に飲み込まれて消えてしまう。

 

我々が歴史史料を読んだとき、たとい言葉の意味がわかったとしても、理解できないこ

とは山ほどある。その時代特有の価値観や表現など近代の合理主義とは相容れない部分

はどうしてもよくわからない。合理性から外れた事象は、合理性に基づく近代文法では

書ききれないだろう。

せめて何を歌ったか、進行はどうだったか、は書けるとしても、それを超えた核心部

分、自分の目に映った景色はどうあがいても無理だ。このブログと同じように、随分と

意味不明なことを記しているだけになってしまう。

 

ライブ帰りの私はこんな感じだった。その時々考えたことを克明に記録すれば、少なく

ともその時の感情にけりをつけられる、供養できると思っていた。しかし実際にはこと

ばにすること自体、自分自身にとって限界がある。ネタはたくさんある、でもその後ろ

めたさが尾を引く。

もちろん自意識過剰かもしれない。自分に酔っているだけかもしれない。しかし、よく

現実を見据えるには、徹底して自己中心的にならなければならないだろう。強烈な自己

意識こそ、西洋哲学を貫いた原理の一つでもあり、隠者の知恵ではなかったのでは? 逆

に自己意識がない人とは何なのであろう。

ライブの時、その後の感情に真摯に向き合って何らかの意味を見出すために、記憶を呼

び覚まして、それを客観的に評価、批判して。そのこと自体に意味があるのかどうかは

今もわからない。

 

ネガティブ?なことを考えながらもう冬が近づいていて、改めて色々楽曲の感想を書こ

うかどうか、迷っている最中で。音楽理論をしっかりと勉強すれば、少しはまともなの

は書けるのだろうか。

 

そんなことを考えていると、FANZAとかDLsiteのレビューって書いている方々って本当

に素晴らしくて、尊敬するよね。他の通販サイトよりも圧倒的に質がいいし。

 

まあ好きなことにはまっすぐでいたいのは確かだから、「悩んでいるよりも好きなこと

語れ」って感じ。

 

 

Endorfin. 6th Album LOST-IDEA 感想と雑感

この間の春M3の中でも一際耳目を集めたサークル 「endorfin.」の6th Album です。外まで列が形成されていたのはとても驚きました。

 

結論から先に言います。全楽曲これまでにないほど素晴らしいです。(ボジョレーヌーボー並感) 

 

 

endorfin.jp

 

ストーリーは「崩壊した世界で紡ぐ二人の少女の物語。平和な日常が偽りだと知った少女が、その先で見たものとは__」(公式サイトより引用)という「鬱アニメモノ」となっています。少女の名前は「シロ」と「クロ」。 

コンセプトやストーリー自体はこれまでのendorfin.のアルバムの骨格を決めていたわけですが、(例えば4th album 「Alt. Strato」) ここまではっきりと描いているのはこれが初めてかも。ある意味では一つのストーリーを表す楽曲群として纏まったアルバムでありますが、またある意味では、楽曲が少なくとも具体的なストーリーに供する以上、ストーリー性でしか楽曲を楽しめなくなるのでは?といった懸念も成立するわけです。実際最初に私が感じた印象はまさしくそれでした。ただ全て杞憂だったのですけど・・・

 

 

 

 

各楽曲の感想

  • 絵空

Lost-ideaの物語の始まりを告げる楽曲。明るい曲調の割に歌詞が不穏という、まさしくアルバムのテーマ通りに仕上がってます。電子的なストリングスが物語るイントロ、全体を貫き通すへ長調の主旋律、特にBメロの情感がたまらないですよね。爽やかさを持ちつつも、B♭が少し物悲しげに響くのがポイント

 

不穏な要素たる「絵空」の歌詞ですが、世界の秘密を隠す側=シロの立場から語られていることがわかりますね。'その瞳が歪んだリアルにそまってしまわないように'、'失くさないように鳥籠へ'、健気な思いが伝わります。

この曲の中で印象深いのがサビの歌詞「フリティラリア」。何を表し何を象徴しているのか。フリティラリア  fritillaria とはユリ科バイモ属を指す。'春を待つ'ことから開花時期が春のヨウラクユリかな? 開花時期はずれますがフリティラリアにはあの「クロユリ」も含まれます。もしかするとクロユリ=クロと比定することも無理のない話かもしれません。

 

なお、こちらなくるさんとデルタさんの共作の作詞のようですね。 

  • カラフルモーメント

 lost-ideaの中で最も可愛らしい曲。Raindrop Caffé Latteの時もそうですが、endorfin.の作る方ことsky_deltaさん、こういう曲作るの上手いなあ、といつも思います。

A→B→サビ→A→B→間奏→B→サビ(転調 半音上げ)の進行。今まで2番サビがない曲はあったけど(Spica、Raindrop caffe ratte、泡沫の灯)、間奏→Bメロは見られなかったと思います(記憶違いの可能性は高い)。それとイントロの秒針の音、この曲の情景をセンスよく表現していて好きです。

 

繰り返しになるけど歌詞がとってつもなく可愛い。なくるさん作詞だったっけ? クロ目線で描かれてます。'ねぇ夜になると明日が待ち遠しい なんて 思っちゃったりするんだ'とか、明日が来てほしくない私にとってはここまで眩しい文言はないくらい。そして'お揃いで買ったキーホルダー'、ジャケットのイラストにしっかり描かれています。

'百合のように'といった前曲「絵空」を踏襲した二人に対する比喩から考えると、対句的に2曲が構成されていると言えるかな。セットで聴きたい曲ですね。

 

  •  [kaleidoscope]

 カレイドスコープ=万華鏡の意。'レンズのような装置'といったストーリーの設定とつながるのかな。一粒ノ今、以来の2分弱の短い曲です。

 

インターリュードとして、このアルバムのコンセプトであるところの崩壊した世界、その始まりを告げる曲かなと、M3前のdemoムービーでは思いました。公開された際、衝撃的に思った人も多いのでは? ただ音を一つ一つはめ込んだだけのような、機械的なメロディーが印象的

 

'幸福のアシンメトリー'って表現が結構気に入ってて、丁度前2曲でのシロとクロの思いがすれ違っている、その非対称性不均衡性が次の曲でも如実に表れているのかな、と

 

  • ユリシス

 ユリシス=オオルリアゲハ Papilio ulysses。endorfin.って結構学名が好きですね。(e.g. Cornus Florida =ハナミズキ) 蝶という意匠自体はかなり一般的に女性について用いられることが多いのですが、(なおユリも蝶も両方とも比喩で使われている曲にDuca 「Cold butterfly」がありますね)ここで重要なのは、幸せの象徴たる青い蝶であり、かつそれらが番いの蝶であること。元の世界への憧憬の念が含まれているのでしょうか。一方で[kaleidoscope]で描かれた胡蝶との関連性については後々述べます。

 

曲調としては悲哀を直截的に表した感じ。明るい曲調の中であっても、歌詞は結構報われないようなことを言っている場合が、endorfin.では多いですけどね。

サビとかBメロとか途中で全音に変わっていたりと全体としてあっち行ったりこっち行ったりしたような、混迷、当惑を優美に表したものになっていますが、個人的にはここがこの曲の試金石となる箇所かな、と。例えば転調は動起を印象付けたり、繰り返しを避けることで作品全体をドラマチックに見せたりと、その効果は絶大ですが、それと同時に作品の一体感を壊す原因にもなります。Bメロ→サビで転調してきごちなくなった例もまあまあありますし。

ただし、電子的なストリングスやピアノの装飾が、語る対象への驚くべき追及力を以って、曲の構成を強固にする演出しているので、全体としての統一感を依然として保っているのですよね。デルタさんそういうところ上手いなあと。編曲次第でこの曲、結構印象がガラッと変わるのでは?

 

歌詞の内容もこれまた悲哀に満ちています。全曲のお互いの「すれ違い」が'双曲線' (いくらグラフを延長しても互いの曲線が交わることはない) '、'逸れていく番いの蝶'といったワードで例えられています。

そして'神様'についての捉え方ですが、「春風ファンタジア」で語られるそれを同じでしょう。どうもendorfin.の楽曲に出る神様は超越的で主人公たちの側にはいないようですよね。

また、'羽風が狂わせた'の元ネタ。私はバタフライ効果から来ているのではないかなと思っています。これもSF小説とかで度々出てくるのですが、要するにほんの些細な掛け違いで、運命を大きく狂わせてしまった、それが何なのかは果たして・・・ですが、少なくとも1番の歌詞とも、そして最後を飾る曲「薄明が告げる明日へ」でも明らかに意識した部分があるので、あながち間違えではないのかな、と

 

こちらはデルタさん作詞の楽曲。モチーフの用いられ方からもなんとなくわかりますね。

長々と書きましたが、この曲がLOST-IDEAの中で一番印象に残りました。すごい素敵な曲です。

 

  • LΦST-IDEA

 表題曲。系統的にはrealismやluminous rageに近いけどシンセ的な要素は軽減されロック風味の強い曲調となっています。これまでの曲に比べアッと驚かせる要素は少ないものの、ライブとかでは盛り上がるような(というかライブで歌っていましたね)王道を征く構成をしています。

 

Aメロ、サビはハ短調を基本とする調性となっています。一方でBメロだけは少し違うのかな。2番Aメロで唐突に電子ピアノ音が波をうつように編まれていますが、これまた綺麗でendorfin.らしいなあって思います。間奏のギターソロもカッコいい

 

'緋色'、'純白'、'黒'といった色彩表現がAメロでこの楽曲の物語の情景を描いていますが、'緋色'は[kaleidoscope]で用いられた蒼色と対応しているようにみえます。また気になった点として基本的に歌詞についてワードを漢字に変換する癖が強いように感じますが、'よすが'だけ平仮名なんですよね。多分'縁'との混同を避けたかったのかなあって。意味合いは拠り所ということですが、'願った未来'でしょうか。

 

こちらもデルタさんの作詞。感傷的なユリシスとは打って変わって、戦闘的な、アニメのOPのような曲でこれまたいいですね。

 

  • dispel 

 曲の公開は2016年(cross beats 提供曲)ですので、足掛け2年半でのfullバージョン公開となります。これを楽しみにしていた人も多いと思いますが、これまたLΦST-IDEAと同じく格好いい曲になります。

自分もshortバージョンは何回か試聴したことはありますが、当時は全くハマりませんでした。でもこのfullのdispel、最高にエモくてアルバムの中で一番リピートしています。

 

楽曲の構成自体が、今までの集大成といっても過言ではないくらい様々な要素を詰め込んでいます。まずAメロBメロはハ短調、そしてサビで変イ長調、劇的でエモさが深いのはこのためですが、追加された2番でも如何なく作曲者のセンスが光っています。

まず、「ヘドバン」ツイートでもありました、2番Bメロ、確かにこれは歌詞も含めて壮大で格好いい・・・。

1番Bメロをさらに磨き上げ迫力のあるものに仕立て、サビ前の重要な動機付けの役割を果たしているのはさすがやなあと思いました。ライブでもここの部分、本当によかったです。

そして何よりも気に入っているのは間奏ですね。音ゲー特有のサウンドに電子ピアノの装飾を交えた、今回のアルバムの他の曲と似たサウンド構成をしています。ただこのdispelでは、8bit音(いわゆるファミコンなどのピコピコ音)なんですよね間奏が。フューチャー系だと度々見られるのですが、こういったハードな曲で8bit音を間奏に採用するのは思い切っているなあと思います。endorfin.の楽曲全体を見ると、raindrop caffe ratteや純情ティータイムなどで積極的に採用されていますし、その時から非常に8bit音の使い方が好きなのですが、まさか間奏で、しかもdispelで使われるとは、、最初に聴いたとき、琴線に触れるそのメロディーに感動して泣いてました。そしてインストバージョンはこの8bit音が違います。

 

歌詞はユリシスやLΦST-IDEAとは対照的です。視点も違いますし、決して明るいとまでいかなくても、希望を模索するような、道が拓けたような歌詞となっています。

LΦST-IDEAで朽ち果てた'指標'が'脈打つ'、地平を割いた'闇'を、'交わる思い'が払いのける、また双曲線と称されたユリシスの二人に対して、'二人刻んだ時は無意味だったなんてそんな筈はないと伝えるから'、そして前述の2番Bメロ'キミの描く理想と僕の描く理想がすれ違っても指重ね紡いでく'といった表現に書き換わっていくのが、ストーリーの流れが見えてきますね。

 

歌詞については語り足りない部分もありますが、本当に熱くてエモい曲です!この曲のためだけにアルバム買いも全然ありなのでは?

 

  • 薄明が告げる明日に

 LOST-IDEAのストーリーの終わりを告げる曲。 Alt.Stratoでは最後の曲(表題曲)はどことなく物悲しいものとなっていましたが、一方「薄明が告げる明日に」は爽やかで明るい曲となっています。

 

イントロ、サビ、コーダ、全て調性を変えつつ(ホ長調 ト長調 変イ長調)、同一の旋律で成り立っているところが、多少くどく聴こえるかもしれませんが、シンプルなJPOP的楽曲として映るのでは?と思います。気を衒っていないまっすぐなフレーズが聴いてて気持ちいいです。特に落ちサビの表現がピカイチですよね。そこからラストのサビ、突然Cのキーから始まるので驚くかもしれませんが、どこかその爽やかさ、伸びやかさに今までの楽曲群を経たのを考えると、一種のカタルシスを感じます。

 

歌詞について、'過去の自分に別れを告げたら 何処へ向かおう 何処だっていい'から、dispelで語られたものと重なる部分があります。これ'二人'なんですよね。'行く末は分からない だからこそ知りたい 繋いだ手 解けないように ずっとずっと'、二人の歩む旅路が朧げに提示されてこのストーリーは幕を閉じます。

'選択をもう間違えはしないから'はユリシスの'『間違いじゃないよ』'と対応されるのかな。具体的なことはよくわからないままです、、、(これに関しては色々な解釈ができるのではないかなと思います)

 

ただこの曲についてはサビの歌詞の素晴らしさだけで十分かな

一呼吸の言葉でどれだけの未来が

変わるだろう 笑えられるだろう

幾重にも広がった結末のifはやがて

ハッピーエンドへと辿り着くstory

 

なおこちらはなくるさん作詞。ストーリーのまとめ方がうまいんですよね。 

全体の感想と雑感

 

第一回目で絵空、カラフルモーメント、薄明が告げる明日に、が発表され、第二回目ではそれこそ'日常アニメに見せかけた鬱アニメ'として[kaleidoscope]、ユリシス、LΦST-IDEA、dispelの追加が発表されました。どうしてこのような構成にしたのかについて、先のライブで聞こうと思っていましたが、やらなくて正解でしたね。少なくとも衝撃は結構大きかったし、あぁ騙された〜みたいにも思いましたが、よく考えれば3曲(インスト除く)で6th 'album'というのは少し変だなって感じがするんですけどね・・・。

このSF的な世界観について、自分自身は当初は使い古されたテーマだなあと、第一SF自体が好きではない私にとっては中々とっつきにくいものでした。受け入れられるまで自分は時間かかるかなあ、ということでさえ考えていました。

しかし、CDを開封して全曲聴いて、ライブでもLΦST-IDEAとdispelを聴いて盛り上がって、いかにこの楽曲群が一つ一つ緻密に作られているかを強烈に認識するようになりました。同時に自分にとって、勝手ながら「名作へと発展する要素」として「文脈からその作品が飛翔するか」(この点に関してはまた別の機会で書きたいです)というのを考えています。それに照らし合わせると、それぞれ一曲一曲が個性を放っているので、文脈(今回の世界観、ストーリー)から切り離して聴くなど様々な楽しみ方があるのでは?と思います。

 

そして楽曲の感想では確定性が足りなく言えなかった、色々と解釈できるのでは?といった点について、まず歌詞カードのデザインについてです。

本当にセンスあるなあって感動した人は多いと思います。問題はその解釈で、基本的に各曲ごとに白と黒を基調としたデザインとなっていますが、それについて自分はシロとクロの立場、心情を描写したものではないかと考えています。

  1. 絵空 背景黒 
  2. カラフルモーメント 背景白 
  3. [kaleidoscope] 背景白
  4. ユリシス 背景黒
  5. LΦST-IDEA 背景黒
  6. dispel 背景白
  7. 薄明が告げる明日に 背景白

 確かに白と黒で立場や考え方は対照的になっているのですが、具体的にそれがシロなのかクロなのかが言い切れないので、あくまで推論ですが背景黒→シロ、背景白→クロかなと思います。ただし整合性が取れない部分もあるので、緊急回避的に[kaleidoscope]後の楽曲については具体的な登場人物の心情、個性とは関係ない、あくまでストーリー上の場面切り替えの機能を果たしていると考えるのもいいかもしれません。

また、[kaleidoscope]で提示された「胡蝶」、その他の楽曲を踏まえるとこれ「胡蝶の夢」からインスピレーション受けたのでは?と思う節があります。目の前の世界は現実なのか幻想なのか、'what is reality?'と問う姿は、荘子自分が蝶になった夢をみていたのか、それとも自分というのは蝶が見ている夢であるのか、と問う姿と微妙に噛み合う部分もあるのかなあ、と。特に[kaleidoscope]はちょうど世界の崩壊が顕になったことを象徴する曲ですので、現実と幻想の区別がついていないことの喩えである「胡蝶の夢」とリンクするのではないか、と勝手に勘ぐっています。

 

結局このストーリーの結末はなんだったのでしょうか。その先で見たものとはなんだったのでしょうか。endorfin.の名に冠するように、(end or fin.)「終わり」という概念が特に彼らの特徴というべきものになっていますが、今回もそれを非常に考えさせる要素となっています。「君と二人きりの終わりをずっと探してる(桜色プリズム)」という表現が3年前にありましたが、それと同じ趣向といいますか、そんなことを考えています。

 

また、Endorfin.の楽曲の作詞ってどうなっているかわからないんですよね。クレジットにも特に記載されていないですし。でも配信でバラされたりする可能性もあるので、それに期待したいですね。

LOST-IDEAの方は、ツイキャスで明かされたので記載してみました。このアルバムに限っていえば、デルタさんは叙事的で元ネタを含んだような歌詞を書きますけど、なくるさんは可愛らしくて直接心に訴えるような歌詞を書いてるって感じですよね。カラフルモーメントや薄明が告げる明日にがなくるさん、ユリシスとLΦST-IDEAがデルタさん、ということですが、ストーリーの切り分け的にもわかりやすいですし、それぞれの特長が引き立っているなあって感じます。絵空の'百合'のモチーフはなくるさん提案かな?

えんどるの作詞はほんの一部の楽曲ではわかっていますが、えんどるではない別のアルバムに収録された時くらいですよね。(ガラスアゲハやコトノハ、片翼のディザイアなど) クレジットで知れる情報と今回のLOST-IDEAにおける作詞の担当といったツイキャス等で明かされた情報を元に帰納的にお二方の作詞の癖のようなものを把握できればおおよそ他の曲でも見当はつくはず...と思いきやRaindrop Caffé Latteのように可愛らしいストーリー仕立ての曲の作詞、デルタさんなんですよね。(Horizon Claireは全曲デルタさん作詞です。そこを考慮に入れると英詩を使った曲はデルタさんっぽい?)

一方で非えんどる曲でなくるさん作詞だとガラスアゲハ、テアトル・エンドロール、JelLaboratoryやエーテル(Feryquitousさんとの共作)が挙がります。アルバムのコンセプトを強く反映する曲もあり、共通する箇所を導くには、分析する素材が少なすぎる感はある

あと、Alt.Stratoのように物語が一本線で、LOST-IDEAのように2層構造の世界観とは構成が違うアルバムについても、多少作詞の分担が気に成ります。

 

(てかいざ書いてみると自分の音楽に対する知識不足が目立ちますね、、多分一部は違っている可能性があります)

 

長々と書きましたが、本当に傑作揃いのアルバムです。今回は作曲と作詞の面についての感想ばっかで、全く「歌う方」の藍月なくるさんについて触れられてなくて本当に申し訳ないです。ソロ曲含め、別の機会にまた書きます。。。(言葉にできないくらい表現豊かですばらしい歌声をもった方です。。)

 

改めて、すばらしい作品をありがとうございます。

 

 

The World was all before them, where to choose
Thir place of rest, and Providence thir guide:
They hand in hand with wandring steps and slow,
Through Eden took thir solitarie way.

   

John Milton  『Paradise lost

 

(2020/4/24 作詞について情報公開されたので大幅に追記) 

 

何か問題がございましたら修正、削除いたします。

自己紹介

 ノンサー、童貞、陰キャ、のぽんひでです。

 

 昔からブログという文化にはどっぷりと染まっていましたが、実際に書いたことはないので、これが初です。ブログ童貞も卒業です。

 

  • ふざけていない自己紹介

 成績の低い法学部生。似非学徒。人数2人の過疎ゼミに一応所属。サークルは入っていないので、バ先の職場が拠点です。人との関わりが殆どないのですが、なんとか生きてます。コミュ障も相まって語学が致命的にひどいです。

 

 好きな学問は歴史(日本史、西洋史)と哲学(これといった本は読んでないけど)です。嫌いな学問はジェンダー論です。他言語ができなさすぎて、理解できる情報に限りがあるのがつらいです。

 

 将来の夢なんてぜいたくなものはありません。ただただ就活がこわいです。このままでは◯台の世界史講師になるのでは・・・?講師業って実際どうなんですかね。

 

 人と中々うまくコミュニケーションが出来ないので、シャニマスパーフェクトコミュニケーションなるものにドキッときます。もしこのブログを見ていて、実際私のことをよく思っていない方々に先に申し上げます。「わるぎはないんです。すいません」

 

 甜花ちゃんのように非常に甘やかされたため(Pの皆様ゆるしてください)、ろくに家事ができないので、さっさと一人暮らしでもして料理以外はできるようになりたいです。

 

  • 趣味

 音楽が好きです。具体的なアーティスト名はその時々で変わります。ここ数年声優アーティストさんや、デレマス、ミリオンなどの楽曲を中心に聴いていましたが、最近は同人系ばっか聴いています。単なる浮気性です。

 

 ピアノを15年くらいやっていました。主にクラシックを弾いていました。ここ最近ショパン英雄ポロネーズを弾いたっきり触れていないので、結局楽譜が読める〜くらいの能力しかないです。コード譜教えろください。

 

 本当にこれといった趣味は思いつかないので、何だこいつ捻くれているな〜て思いながらブログを読んでくださるとものすごくうれしいです。アンチコメはさすがに精神的にう〜んですけれども、そのときはレスバしましょう。

 

  • ブログの趣旨

 自分の体験や楽曲の感想、考えていることのメモなどを載せていきます。自分の能力不足で間違っているところも散見されると思うので、そうでしたらそっと教えて下さい。

 

 

 

 文才もなく語彙力も壊滅的ですがよろしくお願いします。