音楽とかなんとか 雑記帳

主に感想とメモです。

Endorfin. 8th Album Horizon Claire の雑感

Endorfin. 8th album 「Horizon Claire」の雑感です。Horizon noteで知った人間からしたらそのアンサーアルバムが出るのは本当に嬉しい限りです。Endorfin.に出逢ってから、同人イベントへ参加するようになったんだなって。(実は2年前と最近なんですが) ティザームービーが公開されて、ああ「節目」なんだなって思い起こしてくれるようなタイトルです。

 

ジャケットの風景もHorizon noteそのまま、紙吹雪を飛ばしている姿はどこか象徴的ですよね。Horizon noteは中心に噴水が描かれていますが、今回は鐘🔔。新たな始まりを告げるってことかな。天を仰ぐ姿は遠い過去や未来に思いを託しているようです。

 

死ぬ日まで天を仰ぎ、一点の恥じ入ることもないことを、葉あいにおきる風にさえ、私は思い煩った。星を歌う心で、すべての絶え入るものをいとおしまねば、そして私に与えられた道を、歩いていかねば。

 今夜も星がかすれて泣いている

 

『空と風と星と詩』 尹東柱 (金時鐘 訳)

 

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1.   残光

 

「一粒ノ今」のように全編台詞パートの曲です。今作のintroductionって感じですね!

 

「歩く 歩く」「廻る 廻る」催眠音声のようなリフレインを踏まえながらどこかの「君」を、その残光を探し求める、神秘的な曲です。

 

「春に夢を見て」

→3rd. Raindrop caffé latte(春風ファンタジア)

「夏の切なさと」

→4th. Alt.Strato

「秋の温もりと」

→5th. 純情ティータイム

「冬の静けさ」

→7th. Stories of Eve

 

各季節で描かれた世界観が再度呈示され、「季節は巡り、またこの場所へ」。いよいよ君への追慕の旅も終わりか、そう考えるとStories of Eveの最後を飾る曲が「終点前」というのはこのアルバムの伏線だったのでしょうね。そんなことを意識してしまう。

 

「変わってしまったのはこの場所か それとも」かつてと違って見えるのは、何か大切な人と過ごした記憶が結びついて場所というのは存在しているから。その人を見失った今、色褪せて見えることもありましょう。建物も道路も、かつてと変わらなくても。そして大人になるにつれて、過ごした世界がちっぽけな箱庭に見えてしまう。自分が変わってしまうことで失うものもあるのかな。

 

Horizon noteから4年、万感の思いを込めたあてのない旅路の果てに何が待っているのか。幾多の星々を廻り、巡り続けた先、まるで秒速5センチメートルの様な世界観、その終幕が始まる。


2. ミントブルーガール

 

Endorfin.の初期を彷彿とさせる、海を背景とした爽やかな曲です!イントロ部分のリフレインも気持ちいい、、、スキップしたくなるような曲調

 

特になくるさんの声の表現の幅が広い!Aメロの跳ねるような可愛らしい歌い方、落ちサビの甘酸っぱく切ない歌い方、1曲の中にこれだけ魅力がぎゅっと詰まっていてこれだけでお腹いっぱいになってしまう。

 

「はじまりの予感」えんどるの始まりであるHorizon noteのジャケットに描かれた風景と同じ街かな。「風にのってふわり どこまでも」horizon noteのキャッチコピーと同じく「ミントブルーの帆風」にのって境界線の向こうまで。時が巻き戻ったような感じですね。そして風のイメージは「君」の残り香を意識させます(桜色プリズム)

 

「綺麗なままで終わりたい」「最高の今を生きていたい 魔法解けるまで」刹那的でえんどるらしい終末の美学はそのままに、炭酸水を飲み干した時のあの泡が口いっぱい広がって消えてゆくような。明るさと切なさがいい塩梅で混在している、そんな曲ですね。

 


3. floating outsider

 

「何処へfloating, outsider」が印象的な曲。

 

多分このアルバムで一番歌詞が難解? 「不溶性の僕」を主体として、自分だけが世界の意思(水の中)に組み込まれず(溶けず)、また「僕の空白」=何者になるかわからない未来をバイナリ(2進数)たる世界が乖離させ、今のまま自分を固定化させる(それが「影を照らす」ことかな)。そんな「汚れた水槽」でもがき苦しむような曲ですかね。

 

「誰かの波長」をなぞることでこの苦しみから逃れる、その誰かとは一体... 「君」だとしたら僕と同じく不溶性なのかもしれません。

シャーデンフロイデ」はまさしくこの世界そのものでもあり、同時にこの僕でもあるんですかね。世界から浮いてる、苦しんでるなんて馬鹿な奴だな的な

 

曲調はLOST IDEAの「ユリシス」に似てるかな。なくるさんの歌い方もそれに近い。

ラスサビ前のピアノパートがすごく綺麗。えんどるの楽曲ピアノの旋律をあざとく使ってくるから本当最高 神

 


4. innocent truth

 

待望のfull!音ゲー歓喜! dispelの時もそうだけどfullになってさらに化ける曲すごくないか??

 

「祈りは絶望を映し出すmirror」「希望は絶望を映し出す未来」中々強いワードが並んで最高にカッコいい。明=暗という構造、希望を持つためにはその分絶望を知らねばならないというスタンスですかね。現実から離れた理想家なぞ存在しない的な。「生を受け咲いた花はいつもその意味も知らない」=花を咲かせるためにはその分の生を吸い取る(つまり他を枯らす)ことが必然であるけど、何もわかっていない(生存者バイアスのような) 花のように無垢なる真実ではなく、剥き出しの真実を掴んで進め!てことでしょうか。

 

「誓い」という要素を噛ませるあたり、この曲もLOST IDEAのLΦST IDEAやdispelを意識しているのかな。Luminous Rageから続くかっこいいえんどるの軌跡が見られます。

 

全盛期のI’ve(PSI Missingとか)のような、あの頃のアニソンを彷彿とさせます。特にBメロの重厚感が禁書目録のOP等を想起させます。何だか懐かしい記憶を呼び覚ますような曲だなって思いました。昔、horizon noteの時かな?fripsideやI'veが好きな人やエロゲソングが好きな人はendorfin.にハマるって言ってた方がいましたけど、まさにそれですね。ただ音ゲーらしい疾走感もバリバリ生かされていて、聴き終わった時のカタルシスはアルバムの中でも随一。endorfin.が愛される所以ですね。

 

ライブとかで絶対に盛り上がる(確信)

 


5. Fatalism

 

えんどるEDM!えんどるのEDMってアルバムにはあまり収録されてないけど、MEGAREXなどによく楽曲提供されてますもんね。確かかなり前の曲だったっけ。サビ前のアレンジがすごいお洒落で印象に残ってた曲でした。まさかこのアルバムでまた巡り合うなんて、、、今までEDMに苦手意識のあったんですけど、デルタさん作曲の楽曲で段々と良さがわかってきたような


6. 彗星のパラソル

 

クロスフェードで聴いてて非常に好きになった曲。正直このアルバムで一番好きって言っても過言ではないほど、心にグッときました。

 

four leavesにかなり似ているなというのが第一印象。そういえばAlt.Stratoの前の曲でしたよね。彗星のパラソルも同じく表題曲の前。「言葉にすれば消えてしまいそうなくらい 不明瞭な僕」「曖昧な世界」(four leaves より)は彗星のパラソルにも繋がるのでは? そして天体をモチーフとするのはhorizon noteのspicaに通づるものがあります。

 

何にもなれないままで消えてしまうのがただ怖くて」ある種モラトリアムを彷徨う私のような人間には本当にグッ刺さる歌詞です。幼い日への憧憬、まだ何にでもなれると思っていた頃の自分、そして現実には何者にもなれなかった。成長すると単純なことさえも忘れてしまう。

届かないものほど 涙が出るほど愛しい」失った挙句何にもなれなかった不甲斐ない自分に慟哭する。彗星、お前も私と同じく孤独なのか、と。

 

青年期の苦しみを天体に託した好きな詩があって、それを思い出しました。

 

いずこへ行けばいいのか。東がどこで、西は、南は、北はどこなのか。おっとっと! ちらっと星が流れる。隕石が墜ちたところがどうやら私の行くべきところのようだ。そうだとすれば隕石よ! 墜ちるべきところへ、必ず墜ちてくれなくてはならない。

「隕石の墜ちたところ」尹東柱  (金時鐘 訳)

 


7. Horizon Claire

 

Horizon noteのアンサーソング。1stアルバムから4年間紡いできた旅路がここに集約されています。

 

他の方の指摘でもあったように今までのえんどるの楽曲がモチーフとなってるのかな。

 

・「鼻先を掠めた記憶を纏う春風」

→春風ファンタジア「頬を掠める春風がどこか懐かしくて振り向いた 」

 ここでも風が君を思い出すトリガーとなってる?

 

・「言葉だけじゃ埋められない その温度で」

→桜色プリズム「言葉じゃ言い表せない だからこそSingin' 」

→four leaves「忘れないように歌い続けよう」

と繋がり今までのえんどるの楽曲を踏まえているのかなって感じがしました。

 

何よりHorizon noteとの対比として

 

・「いつまでも君の隣じゃいられないよね」

→「隣寄り添える私になれたのかな」へ、

・「もういちど君の隣で笑えるなら」

→「キミが微笑んで そしたら笑い返すから」

という一歩踏み出した形になり、4年という歳月の中での変化を印象付けます。

 

・「変わってゆくもの 変わらないもの 季節巡っても 解けた糸はまあ結いなおせばいい」

→各アルバムで繰り返された君に対する自己逡巡の答えが出されます。バラバラになったものもいつかは元どおりになる。茫漠としててもいい、思いを結晶化しなくても、その「形ない想い」こそが君への手がかりだったんですね。

 

楽曲の構成ですが、伸びやかなサビのメロディと軽快なBメロとの対比がものすごくうまい。「white night story」でもそうですが、えんどるはBメロが本当に素敵。楽曲のイメージをより深く掘り下げ、複雑さを織り込んでいく。そしてサビをわっと際立たせるところがにくいですね。

 

そしてこの曲を起点として止まった物語が再度紡がれていく。新たな旅路の始まりを予感させます。

 

自分がHorizon noteを最初に聴いた時の感動、あのなくるさんのファルセットの美しさが、そしてえんどるを追いかけ続けた季節が、メガ博で初めてendorfin.のライブを見たときの胸の鼓動が、心斎橋を小躍りしながら帰ったあの時が、全てが走馬灯のように駆け巡りました。「記憶の端で」「いつかの音」が、ずっと響いています。

 

総括

endorfin.の楽曲に出てくる「キミ」とは何者でしょうか。夏と冬のアルバムでは多分結ばれなかった恋人ないし大切な誰かだと思われます。Alt.Stratoは幼少期を描く「Cornus Florida」、青少年期のもどかしさを描く「リフレクション」、伝えられない恋心を花火に託した「泡沫の灯火」そして今作の「彗星のパラソル」で意識されているであろう「four leaves」、もうあの時には戻れない、残酷な現実と残ってしまった君への恋心を歌う表題曲「Alt.Strato」で構成され、どの曲も明確な記憶の中の他者を意識しています。またStories of Eveの「終点前」でも、「君」の趣味嗜好が書かれ、明確な他者の存在を意識しています。

 

だけど、もしかしたら今作は「決別してしまった自分自身」が「キミ」かもしれません。

 

何かを決断するためには過去の自分を裏切ることもある。夢を諦めることで夢を追いかけ続けたかつての自分に背を向ける。もしその決断が正しいならまだしも、間違いだったら?過去だけが未来を裁けるのであって、未来は過去を裁き得ない。過去の自分に後ろ指を指されることになる。それに対する倫理的態度が、自分を過去への憧憬に苛まれ孤独になった自分を責め立てる。

 

思えば先ほど挙げたendorfin.の楽曲って「出来事が起こった後」なんですよ。回顧的に当時を振るかえって自分を慰めるか、諦めるか、責め立てるか、宛先のない手紙を書くようにその感情を歌う。例えば「Horizon note」は開口一番「君はどんな色を見てるの? その瞳はどんな僕映しているのかな」。過去に何か二人の間に起こったことを強く示唆します。そして君といたい、何度も言葉で繰り返しているのに、肝心の君は目の前にいない、いたとしても君には伝えられない、終いには一緒に居たくない。そんなもどかしさの中で逡巡しています。

 

ある意味そういう自分への決別こそがこの旅路の終着点なのでしょう。その結果としてもしかしたら・・・思い人たる「君」と出会い、過去の自分である「君」に報いることができる。「時を越えてまたここで巡り逢う」とはそういう意味を含んでいるのではないでしょうか。

 

でもそういう嘘偽りなく真っ直ぐに、言葉を紡ぐ態度がendorfin.の良さでもあるんですよね。女々しいと思われるかもしれないけれど、ものすごく倫理的で、正直で。誰でも過去の自分を振り返ることはあると思います。今と比べたら何もかも輝いていたのかもしれません。今の自分に違和感や劣等感を感じるかもしれません。でも過去は書き換えられないし、今を必死に生きなければ暗澹たる人生のまま。そういった割り切ることのできない思いを丁寧に拾い上げていく。それがendorfin.なのかなと。

 

そんな歌詞とともに鮮やかなサウンドと、甘々で聞く人の心の色を滲ませ掬い上げる、そんななくるさんの歌声で表現されたendorfin.の作品。押し付けがましくもなく、完全に悲観的であるわけでもなく、ただ色々な記憶を背負った我々の琴線に触れ、あるがままに肯定させてくれる。そんなえんどるが本当に大好きです。

 

 

Ce qui n’est pas 'claire', n’est pas L’endorfin!

 

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