音楽とかなんとか 雑記帳

主に感想とメモです。

Nacollection-3- 感想

本来5月中の夏コミで頒布予定だった作品。しかし例のあやつのせいで中止となり作品も発売延期...その中でパワーアップした「なこれ3」が遂に7/9発売されました!

 

なこれの魅力は様々なジャンルの楽曲を通していろんななくるさんの姿を楽しめる点にあるのではないかなと思います。Endorfin.のアルバムや一昨年のJelLaboratoryはある一定の題材をモチーフとしている以上、基本的にはそのストーリーをなぞることに力点が置かれますから、どうしても一曲一曲を単体として聴くのがなこれより相対的に難しくなるんですよね。

 

初コラボとなる作曲家さんとの楽曲にも、今まで提供してきた信頼ある作曲家さんとの楽曲両方とも楽しめるのも、藍月なくるプロデュースアルバムならではの魅力があります。特に最後の2曲に今までとは一風変わった曲が入っているところがいいですね。

 

前回のNacollection!! 2がすでに2年半前!そこから歌声、表現力、技量、何もかも遥かにパワーアップしたなくるさんに注目して聴いていきましょう!!

 

(ここから先ガンガンネタバレあります。)

 

nacolle3.tumblr.com

 

youtu.be

 

 

 

1 Azura Luno

メン限で先行公開された曲。曲名の発表があった時「あ、なくるさんのそのものの表題曲やん!」と一発で感じました。タイトルはまさに「藍月」。随所にご本人のモチーフが散りばめられています。まだ他の楽曲が公開されてない頃、ここまで属人的な曲はAzura Lunoだけっしょと思ってたら、そんなことなかった。恐るべきなこれ3

 

作詞作曲はRD soundさん。例えばLa prière「それは世界を越えて」でほよ民の間では知られていますね。Azura Lunoもそれは世界を越えてと同じくストーリー仕立てになっていて、綺麗に物語っているところがいいですね。

 

なおAzura Lunoには原型となった曲が存在していて「Heart-shaped chant」(水樹奈々)だそう。エレガの楽曲だったんですね。

 

ストーリーの骨子に沿ってAzura Lunoを見ていきます。

まずこの楽曲では言葉」と「うた」のテーゼを対比的に捉えながら、時空を横軸にして展開し、その中で「うた」を託された存在が月のように歌い明かす、そんな世界観になっています。まさにこの託された存在というのがなくるさんであり、そのための舞台装置として「言葉」「うた」「太古より続く物語」を配置し、ご本人の存在感が浮き彫りにまるで讃えるかのようになっています。

 

引き立てるこれらの要素は具体的には以下のように展開され関連付けられます。

 

1番Aメロ

すべてのはじまりは「言葉」だというだろう  思い伝え語り継ぐ  それがなくるものかと

けれどそれより  或いはそのずっと前に  思い伝え語る「うた」言葉ではなく

2番Bメロ

けれどきっとそれは  胸の中に眠っている  形もたぬ夢幻  それがなくるものかと

だからだれしも  言葉飾るそれが前に  思い伝え語る「うた」  空の何処かへ

 

「すべてのはじまりは言葉」は例えば新約聖書初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった」を想起させます。言語の起源は哲学史において長く議論されてきたテーマでもあり、歌という営為もまたその起源について考えられてきたものです。ここでは言葉より先んじて「うた」が存在していたことを示し、言語に還元しえない思いを歌い上げる、そしてそれが「天へと  昇らせ」、「すべて  輝かせてゆける」(2番Bメロ)とつなげていきます。言語との対象性を持たない茫漠たる思い、それが「なくるもの」として表現されています。(むしろ言葉がなければ語り明かすことはできないのでは...と思わなくもないですが)

 

また落ちサビを引き立たせるCメロでも上記と同じ枠組みが再提示され、「遥か  丘向こうへ吹く風  万年の砂礫なる宝石  嘗ては人知れず「言葉」にもならぬ夢」が「夜空照らす形なさず  なくるものかと」と風、宝石、夢という形で具体性を帯びています。ここの畳み掛けが盛り上がるんですよね。それから後の間奏もまたよき。

 

サビの表現がこれまた素敵で「この名前」をタイトルであるAzura Lunoと読ませています。

例えば

Azura Luno  わたしがこうしてここに立つとき  その物語よ  産声も高く」(1番サビ)

Azura Luno   わたしがそれを空に告ぐるとき  その物語よ  また積み重なる」(2番サビ)

そして落ちサビでは

そうしていつか  はじめに  ある「言葉」よりも先に  この物語は 始まっていたのだろう

かくしていつか  おわりの  ない「うた」を託されては  夜が来る限り昇り続ける・・・

としてモチーフの繰り替えされ、月と「わたし」(=なくるさん)を重ね合わせた形で登場します。世界観の提示と主人公の出現、そこの構成が綺麗に整っていていいなと思います。

 

この物語において、最もご本人の存在感が浮き彫りになるのはやはり

満天の星空を従え 夜の淵まで歌い明かせ」(ラスサビ)

でしょうか。月と星々は本来同時には見られない存在です。月が輝くほど星々はその明るさに隠れます(つまり満天の夜空の時は新月に近い)。ただ星々を統べ歌い続ける姿は、なくるさんらしくていい。

 

このように壮大な世界観の中で月のようにたおやかに、パワフルに歌い切っているところがこの曲の魅力です。なくるさんの歌い方って可愛らしさの中に力強さやエッチさがあって素敵なんですよね。最初のコーラスからラスサビまで、なこれ2よりも深みを増した歌声で表現されています。音の紡ぎ方に無駄がなくなって、ムラが圧倒的に昔の作品よりも少なくなっています。一つ一つの音や動機(モチーフ)をしっかり意識して表現できるくらい、レベルアップされてて応援してて本当に嬉しいところです。中世のミンネジンガーのような姿を投影し、ここまで壮大な物語を紡ぐのはどこか確固たる意志みたいなものを感じさせます。多分、なこれ2では絶対に歌えなかったかと。

 

ただAzura Lunoって何語なんですかね?言葉としては人工言語のイドが2単語に当てはまりそうですが。多分音で選んだ説が一番強そう()この楽曲の発表直後そんな話が周りで繰り広げられてましたね。ちなみに仏語にするとLa Lune Azurée

 

仮歌は棗いつきさん。こちらのバージョンも大変優れていていいですね。特にサビのAzura Lunoの表現がなくるさんと全く違うのでそこが対照的で一度で二度美味しいって感じ。メン限で流されましたので是非。

2 メリーメリーゴーランド

作曲はlapixさん、作詞はゆーりさん、soleil de Minuitと同じクリエイターやん!ということで一番楽しみにしていた曲。奇を衒わずひたすら常道を貫くようなメロディーが聴いてて楽しいですね。やっぱなくるさんといえばこんな感じのお洒落な曲っしょ!と思い出させてくれます。割とクセの強い楽曲が揃っているなこれ3の中で、一番ニュートラルで人に勧められる曲だなって感じです。

 

遊園地デートに鼓動高鳴りながらも、待ちわびてる時や未来のことを思うと不安が見え隠れする、甘酸っぱい曲です。1番は待ち合わせの途中、2番はデート中かな? 中々ここ最近のゆーりさんにはなかった感じの歌詞です。だけどモチーフの使い方が性癖ドンピシャで安定して綺麗な歌詞だなと感じます。

 

そしてタイトルのメリーゴーランドからもわかるように「回る」を軸としてお話が展開されています。歌詞カードでは「回る」がくるくるして、遊び心があるのもなこれ3の仕掛けの素晴らしさ。

 

Aメロの心情表現も大変いいのですが、Bメロがいいアクセントになってます。

キミが スキよ スキよ スキよ

 はやく きてよ きてよ きてよ

 わたし ココで 待って いるよ

 だから」(1番Bメロ)

口ずさみたくなるようなリズム感があっていいんですよね。このようなリフレインは例えばCadeau de Dieuで見られます。(2番Bメロの「なんで」がな゛ん゛で゛ぇ゛に変換されるのはきっと気のせい)

 

サビはほんとに王道って感じでぐるぐる回る恋心を時計の針やメリーゴーランド、観覧車に象徴させています。

ねえ近づいてるの?  遠ざかってるの? キミとわたしの距離感 星をすり抜け回る回る 観覧車みたいね」(2番サビ ラスサビ)

キミとわたしで回る回るメリーゴーランドみたいに」(ラスサビ)

が最高ですね。星をすり抜けるって夜空に浮かぶ月とか惑星とかそんなものかな。確かに観覧車っぽい軌道を描くよなあって気がします。

 

なくるさんの曲の中では割と低めの声かな。ファルセット大好きマンだからアレだけど、可愛らしさと大人っぽさを上手い塩梅で詰め込んだ声でいいですね。楽曲の度に違う姿が見えます。そこがなこれの面白さであり、なくるさんらしさであるわけで。

 

ちなみにメリーメリーゴーランドの作詞のゆーりさんとのコラボ曲が7/7に配信されました(こちらはアルバム未収録)。タイトルは「七月のヘリオグラフ」。七夕神話を下敷きとした綺麗な楽曲なので是非。

 

七月のヘリオグラフは↓ 何気にゆーりさんとなくるさんのツインボーカルは初?

www.youtube.com

 

3 わたしがわたしに至った10の理由

久しぶりのLilyさん電波曲。ソロだとわがままモザイク以来かな。(キミに馳せるスクープに収録されてます「次の情報です」は妃苺さんとのコラボ)。なこれ2だと「その名はRendezvous」とかが好きですね。電波曲のプロってイメージです。曲の略称は「わた10(わたてん)」

 

アルバムに収録されている歌詞カードは実はyoutubeの本気verの方。本アルバム収録版は途中のセリフがかなり違います。個人的にはなこれ3バージョンが好きですね。セリフが浮っついている感じがいつものなくるさんらしくていいです(なこ虐じゃないよ)。またちょっとぶっきらぼうな方がより最後の部分で心にグッときます。

 

さてタイトルの10の理由ですが、10個のキャラを演じ分けています。この時点でやることが半端ないです。キャラ設定は順に「ツンデレ」「ドジっ子」「メイドさん」「ヤンデレ」「病弱」「無表情」「ヤンキー女子」「お姉さん」「不思議ちゃん」そして一番重要な「普通」。確かにご本人の配信を観て洗脳されていると、メイドさん:「ご主人様、次の御命令を(アルバムverは「ご、御命令ください!ご主人様!」)からの「休まされました」は非常によく理解できます。上に挙げられたキャラとどうもなくるさん本人と乖離しているところがある種この曲の肝となっています(むしろ不思議ちゃんが一番あってる説ある)。またそれぞれアレンジが違っていたり歌詞カードの字体を変えたりと凝っています。まあキャラと演じるご本人の性格をまぜこぜしちゃいけないって発想も(小説とかでも作品に作者の人格やらを見出すなって話に似てる)ありますが、この曲はそういった視点を通すことによって楽しめる楽曲だと思うので、その意味でもなこれらしいです。

 

そして最後を飾るケース10「普通」がこれまで9個のケースをめぐる中での一つの到達点となっています。「アリな雰囲気だけど  意図した純粋さだから  う〜んなんか違うんだよなぁ」が特に好きで、「意図した純粋さ」ってところがまさになくるさんを象徴するワードだなと。清楚っぽい(清楚ではない)に通じるものがありますが、そこが魅力なんですよ(もちろん褒め言葉)。

 

サビの歌詞の変化もまたエモい。「1回くらい振り向いて」→「10回と言わず振り向いて!」→「たった1回振り向いて!」とキャラを辿っていくうちに脳回路絡まってショートしたり、「わたしの気持ち」が解ってきたり、そして最後は等身大、ありのままの自分を受け入れる、その過程がものすごく琴線に触れます。ラスサビで転調するのもエモーショナルでいい。

 

この曲は本当にこれまで追い続けたファンには何もかも刺さるんじゃないんですか?なくるさんが配信を始めて、その中で色々なイメージが生み出されては既存のイメージが壊れていったりして(サイコパスだったりほよ野郎だったり様々)、でも何か可愛らしくって謎に真面目で飽きさせない魅力があって。私もあれこんな人だったんだ、えぇ...って多分796回くらい思ったんですけど、今なおこうやって曲を聴いているわけですし。そこを余すところなく最高な形で描き切っているところが最強ですね。あれファンがこの曲かいた?って感じるくらい、我々の思いとシンクロしてて電波曲なのに泣けます。「その全て抱きしめてかわいいって教えてくれたんだ」ってとこでグッときました。Azura Lunoがなくるさんの代名詞とするならば、この曲はなくるさんの歩んだ道のりを描いているというか。

 

歌詞カードのイラストが超絶可愛い上に2pまるまる描かれているので大変ボリューミーです。なおLilithやフェイクも同じく2pイラスト付きです。イラストレーターさんもそれぞれ違うので豪華で最強だなと思います。

 

最後に、youtubeの本気verはまさに圧巻の一言。やっぱり上手いです(声優としてのなくるさんの活躍にも期待です)。いつかの不定期彼女を思い出します。youtubeの方の映像を見ることで初めてこの楽曲の魅力が伝わると思うんで是非とも。「風邪引いた経験ないし......今のも若干嘘だし」ってところで「ほよ?」と出しているところが打点高いです。藍月なくるじゃんって感じです。10個のキャラの演じ分け本当にうまいのに、でもちょっと笑ってしまうのはほよ民の性ですか?結構属人的な曲だけど、他の声優さんが演技力検定って形で歌ってみてもおもしろそう。

 

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4 Lilith

twitterで度々出ていたエッチソングとはこのこと。リリスって神話上の女性ですね、悪魔というか魔女というか。作曲はジョーカーパレードのかぼちゃさん。何となく予感はしていました。前評判通り歌詞は色々と過激です。ただ最後はちょっぴり切ない。ジャズっぽい、全体的に感情・劣情をひたすら揺す振り続けるような、そんな楽曲です。こんな小悪魔っぽい感じの曲は「monochrome butterfly」や「その名はRendezvous」とかありましたけど、ここまでエッチなのはなかったですね。なお副題は「転生したらエッチなサキュバスと世界を統べることになった件」

 

元ネタは賭ケグルイOP「deal with the devil」(Tia)だそう。

 

Would you like to have fun with me?

楽しいことやっちゃわない?って感じですかこれ。挑発的な文面から始まります。その後のピアノサウンドがまたジャズさがあって好みなんですよね、過激なナンバーはジャズで味付けするのが一番です(謎理論)。

 

1番の歌詞はLilithのおでましって感じでしょうか。どうも造られた悪魔っぽい?

What do you want? フラスコの中の悪魔が微笑う (baby tell me tell me)

anything you want 叶えてあげるわこの魔法で (Sign this contract, now here!)」(Aメロ)

フラスコの中の悪魔はホムンクルス(フラスコの中の小人)を想起させます。Bメロで造られた存在であることが伝えられます。同時に長く生きられないし力が尽きれば消えると...

 

最初にドキッとするのはサビに入る前のBメロですね。

二人の 邪魔する アイツら 片付けましょう

ブレスの切り方がやっぱえっちなんですよね... これも才能といいますか。なお2番の方はもっとすごいことになっててはえ〜...って感じです(語彙力皆無)

 

そしてサビはもうやりたい放題。ああここまで入っているのは多分初めてじゃないのでしょうか。最高すぎるので全文載っけて見てみます。

もっと もっと もっと 私を感じさせて この手であれもこれもそれも壊したい

 扇情的な 気持ちいい命令をちょうだい おあずけじゃイヤぁっ

 もっと もっと もっと 手強い敵(ヤツ)がいいわ 溢れる魔力(ちから)抑えきれず暴れたい

 刺激的な 濡れちゃう戦闘(プレイ)をちょうだい 逝きたいの

 快楽に その願い しゃぶりつくすわ ねぇいいでしょう?

いざ文面にするとやっぱりやばいです。もっと×3のとこの情感は半端ないです(タケ○トピアノのCMとか言わない) 。単純なメロディの繰り返し+畳み掛けが最大限なくるさんのボイスにマッチしていて勢いがあります。淫魔というか何というか、ここまで直接的なの大丈夫だったんか...と思います。そしてここで外出中だと恥ずかしくなって聴くのをやめる。

ただ1番で散りばめられた要素が別の意味で最後伏線回収されることになります。ただのえっちソングではないんですよLilithは。

 

2番も2番でやりたい放題、よりぶっとんでます。劣情やら嫉妬心を煽るのが本当にうまいですね。本当になくるさん?(確認) 例えば2番Bメロ

私ってばモテるの 追手がすぐに来るわ 悩んでる間に誰かに 奪られちゃう なんてね?どこにも 行かないわ

この太字の部分がセリフなんですけど、急にこれ来るからドキッてなりますよね。結構セクシーな声出せたんですね。お姉さん役ASMRお待ちしております(こういう役今までなくるさんにあったっけ?って素朴な興味もありますが)。

っとふざけましたが、わた10と同じく器用に声色を使いこなすことができるのって天賦の才だと思います。生放送のなくるさんのイメージがここ最近は先行しますが、やっぱすごい方なんだなって引き戻してくれます。

 

2番サビも1番と同じく過激に畳み掛けます。「もっと もっと もっと 私を使役(つか)ってみて」であったり「死んだって構わないわ 命を 魔力(ちから)に換え暴れ続けたい」であったり、傲慢で高飛車で欲望を徹底的に貪り尽くそうとする悪魔ですが、その次の落ちサビで急展開を迎えます。

 

落ちサビはどうやらこの悪魔を創った男の命が危うくなった模様。「私はどうだっていいわ 魔力を 生命に換えあなた生かすわ」落ちサビ特有のバックミュージックの寂寥感がより切なさを助長し、切迫した様子を伝えます。ちょっと前まで快楽に浸っていたのに... ここで「命令違反」ってワードが出てくるのやっぱりエモいですね。そりゃこの男の本望ではないでしょうから。

ここから1番の歌詞とは真逆の歌詞が続きます。「あなた以外 あれもこれもそれも欲しくない」ってのはまさにそれを端的に表しています。

 

そして「愛してるって言ってよねぇ」がこの曲の一番の盛り上がりです。サビの中だとここだけセリフ。曲の世界観が爆速で展開される中、ここまで迫真のセリフをねじ込むことが余力がある上に、非常に切迫したリアルな表現ができるのは、声優の本領発揮ですね。ここら辺の表現の使い分けが綺麗になされているところはやっぱりすごいなと。煽情的で刺激的なのに泣けます。その後「願いを力に変え人は生きるの 忘れないで あなたの中でずっと 生きたいの」と続けます。1番サビの「逝きたいの」とは真逆です。この切ない終わりに1番の歌詞と対比させているのは、楽曲としても、物語としても素敵。

 

最後の「快楽に この命 しゃぶりつくすわ ねぇいいでしょう?」もそのような文脈で見ると、決して性的消費に収まる話ではないです。直前の「願いを力に変え人は生きるの」って部分は何となくなこれ3全体にも、なくるさんが携わった幾多の曲にも当てはまるんじゃないのかなと思います。

 

かなり早口な感じだけど、すごいなくるさんの調子にぴったり合ってるというか、最大限に魅力が伝わっているのでこういう過激な曲増えてください(願望)

 

イラストはえか先生!アルバムの中に先生のイラストが載るのっていつぶりかな。歌詞カードを開いたとき、一番驚きました。Lilithのhの先が矢印になってるの、何でかなと思ってたらアレ悪魔のことだったんですね。可愛らしさがギュッと詰まってるんで是非

 

5 フェイク

こちらは4/1にエイプリルフール企画としてyoutubeで公開になった曲。ふぇりさんとなくるさん、最強の2人とはこのことで。

 

なこれ3の中では一番カッコいい曲になってるなと思います。ジョカパレ最初に聴いた時と同じ衝撃ですね。「解ってんならさっさと征け!」とかほんとになくるさんが歌っている?って感じになります。曲調は乖離光に非常によく似ています。作曲のFeryquitousさんが好きなコード進行だそうで(twitterの質問箱参照)。まあ無機質な曲調こそがFeryquitousさんの真骨頂であり、抜群にキレのある楽曲になってるんじゃないのかな。Identismの頃から聴いてますが、その時よりも格段になくるさんの表現力の上がっているんですよね。

 

曲調は過去の楽曲と似ていますが、歌詞は今まであまりなかったストーリー仕立てとなっています。内容はフェリさんらしくよくわからない... ただフェイクの動画のモチーフ-大量のテレビが積み重なってブルースクリーンになっている情景から、どこかペルソナ4ぽいかなって気がします。確かなくるさんペルソナシリーズ好きだったはず。

 

冒頭部分、告白文体で始まります。これ誰目線なんですかね... ただまあ告白文体ってなくるさんの曲だと珍しいので思わずおお話はどうなるんだ!?って聴き入ってしまいますね。

「そうだ、君には言えなかった話、」

「僕がまだ名も無き日の頃に」

「鉄塔の陰を踏み倒しながら重ねた嘘が」

「心残りなんだまだ自分でも、解っていないが」

「今ここで、全てを」

「打ち明けようと思う。」

フェイクから本物の自分に当てた一種の告白だと思われます。途中の『それじゃあ、君は誰?』応答している本物の自分ですかね。基本的にはフェイク目線での一人舞台だと思って差し支えないかと思います。そうすると最後「そうさ本物はこの僕さ」は偽物が本物に成り代わったことになります。すり変わりというか合一というか、そこを物語の基軸として考えるのがスタートラインかなあと。

 

ことが混沌としているので、あくまでモチーフとされたものについて触れていきます。テレビという要素からペルソナ4を経由して「もう一人の自分」(=ペルソナないしフェイク)の存在を想起させます。本物とフェイクの合一という要素に矛盾なく説明できる仮説だろうと思います。

空欄にセーブ

→ 古典的なテレビゲームの要素を後景に配置しているのではないか

並列のフェイク

→ 記録されたが上書きされることのなかったセーブデータの数々

仮のエスケープ

→ 一時保存

前にも見た事があったな。」「あの時もこんな四畳半だった。」「確かそうあの背中は、この机に躓いていた。

→ ゲームに何度もやり直した面をデジャヴのような形で象徴しているか、何度も自分の分身たるプレイヤーを使ってやり直している様子を思い出しているか。

本物のアーカイブ

→ 並列のフェイクの中で唯一エンディングを迎えられたセーブデータでしょうか。

 

ただ何が本物で、何がフェイクなのかは非常に曖昧で相対的なものであるため、誰がどの立場なのかは判然としません。また上記のモチーフがそのままAメロBメロに繋がるとは思えませんし微妙なところではあります。

 

この曲の公開後フェイク君の謎設定だったり、実はこれマイナンバーカード通知カード落とした話なんじゃねとか色々と2次創作が生まれた意味で愛されてます。新たなキャラクターとしてフェイク君を世に出した意義はでかいなあと

 

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他の考察について、しあんさんやすとねさん、土蜘蛛さんのを参考にさせていただきました。ありがとうございます。(何か問題があればお伝えください) 

 

 

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6 Folded Wings 

satellaさん楽曲提供は初?と思いきやIrithがありました。 えんどる的な爽やかさを彷彿とさせながら、何となくギャルゲーっぽい感じの曲です。曲タイトルの意味は「折りたたまれた羽」って感じでしょうかね。

 

全体の流れとしてはかなり転調が激しくて幻想的、中々最初はピンとこなかったんですけど、Aメロのピアノサウンドが気持ちいいし、要所要所のストリングスもいいですね。

 

Aメロは多少ネガティブな感じです。ただその要素を塗り替えるようにBメロサビまで、翼を広げて駆け抜ける感じが特徴的です。

舞い上がれ 想いのまま 風を駆け抜けて 切り開いた 未来が 二人の場所へ いつか導いて」(1番サビ ラスサビ)

たとえ翅失くして  闇に飲まれても  君が見守ってる  さあ広がる明日へと」(Cメロ)

このサビ部分がとても爽やかで気持ちいいんですよ。非常に変則的な曲調なんですけどコーラスを交じ合わせながら、まるで風を切るように伸びやかにメロディが進むんですよね。ビブラートを多用しているところは今のなくるさんだからこそ。

 

この折り畳まれた「」ってところからモチーフはちょうちょなんですかね。翅というワード自体はガラスアゲハでも登場してます。

 

(元ネタはやなぎなぎさんの「カザキリ」だそう。)

7 whisper 

高城みよさんの作詞作曲を聴くのは初。最初聞いた時カービィ夢の泉のBGM(レインボーリゾートのような)的な、3拍子の楽曲だなって思いました。速さはワルツ感ある。アルバムの最後にこのようなほんわかした曲を入れるのはいいですね。

 

コーラスの合わせ方がほんとにセンスが光ってて好きです。今まであまり無かったコーラスをなこれ3では結構使っていますが、一番綺麗にできているなと。Azura Lunaのような大曲とは違い、このような小曲もまたいいんですよ。3拍子の綺麗なリズムになくるさんの全てがつまっています。

 

この楽曲一番の魅力は作詞です。多少モチーフが散らかっている気もしますが非常に綺麗です。境界線で挟まれた空と海をつなげ合わせるような不思議な歌詞です。例えば冒頭とラストで繰り返される「空を泳ぐ鳥と何もない果てを探してる」ってところは若山牧水の「空の青海のあをにも染まずただよふ」という情景を彷彿とさせます。

 

AメロBメロはそれぞれ街の情景を描き出しています。「崩れかけの壁」「錆び付いた歯車」などの表現はどこか人が離れて荒廃しきったような様子が、しかしそれでも、「誰も居なくても」街を動かし続けているのでどこかディストピア感があります。それを背景として窓から空を眺め余情を歌う、そんな感じですね。歌詞カードでも三日月、それらを臨む白いレースカーテンが描かれやはり楽曲の世界観を忠実に表しているなあと感じます。

 

表現が最も綺麗なのは、サビです。

きらめく星を切り取って  波打つ影を飾りましょう  風に靡いた夜色の  ドレスに身を包んで」(1番サビ)

夢を纏った  指先で 私の愛を描きましょう  鈍く光った箱舟に  そっと想いを乗せて」(2番サビ)

揺らめく月を掬い上げ 静かな夜を飾りましょう  闇に揺蕩う銀色の 海月に身を任せて」(ラスサビ)

1番サビでは天上の星々を海へ、ラスサビでは逆に海に映る月を天上へ、やってることは全知全能な感じがしますが、そこが地平線を挟んだ海と星空の余情をよく謳っているなと思います。そしてラスサビの「海月」は突然出てきます。なこれの世界観を完全に踏襲していますね(そうでなきゃいきなり出てこない)。小曲であるのにも関わらず、なくるさんの要素を全面に押し出し「夢を纏って  指先で 私の愛を描きましょう」などAzura Lunoに負けず劣らず全知全能な姿が演出されているのは本当に素晴らしいです。Azura Lunoで月と歌を、そしてWhisperでそれらと海月を混ぜ合わせていて、最初と最後が非常に綺麗に仕上がっており、Nacollection-3-いう物語を引き立たせています。最高でしょ

 

さいごに

全体的に歌い上げる難易度が高い楽曲ばかりで、かなり挑戦的だなと思いました。特に「わたしがわたしに至った10の理由」は非常にハイテンポであれだけの歌詞を詰め込むのはかなりきついのでは... さらになくるさんの今までの軌跡を想起させる属人性の高い楽曲でもあり、割とプレッシャーも大きかったのでは?と勝手に思ってます。(高度な演技分けを要求される楽曲でもあるので違う声優さんが歌ったらどうなるんやってのは気になる) 

 

さらに他の楽曲も、メロディーを追いかけるのが難しいFolded Wingsやら、表現の切り替えが激しく扇情的なLilith、フェリさんらしいメロディの畳み掛けが特徴的なフェイク、本当に高い表現力を要求されるものばっかでしたので、わあこれはすごい(小並感)ってところです。

 

改めてなこれ2から幾年月経ち、パワーアップしたなくるさんを拝むことができました。感想を書いてて、やっぱり昔と同じようには感動を味わえるわけではないですが、どんな姿であれ、持っている才覚や能力は砕けないものであることを再確認しました。

素晴らしいイラストに囲まれた藍月なくるを象徴する楽曲群に改めて心を預けるとき、そこには無数の記憶を宿した素敵な世界が広がっていること、何より、行き交う年月の中で偶然なくるさんの存在を知り、その存在に人生を賭けて、結果的に色々なファンの方々と一緒にその活躍を応援できること、その全てを大事な思い出として、誇りに思えます。

 

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