音楽とかなんとか 雑記帳

主に感想とメモです。

The Picture of Endorfin. 9th Album「Monologue off」と物語のきれはし

Endorfin. 9th Album「Monologue off」。それは「あの」愛おしいメルヘンの続き

 

名前もない黒猫と、私だけの秘密。

真っ白な部屋で目を覚ました少女が、黒猫と旅する物語。 さまざまな場所を巡る中で、少女は自らのことを思い出していく─

 

  • 1. アンダーマリン
  • 2. Round & Round
  • 3. 惑星トリップ 
  • 4. Alice's suitcase
  • 5. モノローグ・オフ

 

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現代吟遊詩人はかく語りき~角巻わため「my song」~

「僕だけの滑走路」-「角巻わため」の五文字が、夢と現実のあわいに走る。深夜0時の帳を裂き煌々と照るビル一角の明かりをかこつ、夢にあこがれ夢に挑み夢に破れ、それでもまた夢を見る者たち。

 

さあ都会の吟遊詩人、各々の叙事詩を紡ぎ取れ。名もなき無名詩人の為に。現代におのが名を刻む為に。

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晴れ渡る景色の真ん中で〜藍月なくるとおとぎ話の周辺〜の解説

  • ブログの構成について
  • 書くまでの経緯
  • 第1章:一目惚れの魔法と「おとぎ話」解説
  • 第2章: ἀσφόδελοςとその周辺 2016(秋)〜2017(秋) 解説
  • 第3章: クラリムステラとポストモダンの回廊 2018 解説
  • 第4章: Aufschwung 2018〜2019 解説
  • 第5章: Le Temps retrouvé 蒼穹に放たれた物語 2019~2020(春) 解説
  • 最終章.  横滑り・簒奪 2020.4月~2021 解説
  • Coda 紡いだ軌跡はこの今に繋がってる?  解説

 

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晴れ渡る景色の真ん中で〜藍月なくるとおとぎ話の周辺〜

2014~2021年までの楽曲群を辿り、それらを換骨奪胎していく試み。結果的に一つの「物語」を描き出せたらいいな

この「物語」はフィクションです。

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  • Ⅰ.一目惚れの魔法と「おとぎ話」2014〜16
  • Ⅱ. ἀσφόδελοςとその周辺 2016(秋)〜2017(秋)
  • Ⅲ. クラリムステラとポストモダンの回廊 2018
  • Ⅳ. Aufschwung 2018〜2019
  • Ⅴ. Le Temps retrouvé 蒼穹に放たれた物語 2019~2020(春)
  • 最終章.  横滑り・簒奪 2020.4月~2021

 

Ⅰ.一目惚れの魔法と「おとぎ話」2014〜16
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君が1人で終わりない旅に出るならどうかどうか幸運を 新世界のα 雑感

*本当に取り留めのない雑感です。

 

1. Prologue

新世界のα」 それを初めて聴いたのは2017年冬のこと。その時発売されたcomposer:竹下智博さんの「World Hitchhiker! 2」に1曲目書き下ろし曲として収録されていて、クレジットにVo. Lunaさん、lyricsにシナリオライター新島夕さんと中々豪華な顔ぶれが踊っていた、当時としてはそんな記憶しかないと思う。

 

竹下さんの楽曲はましろサマーOP. Pray's Color(Vo.はKOTOKOさん)で知り、その後も初恋1/1 ED. 「消せない気持ち」や、ゆめいろアルテット!ED. 「あるがままの小鳥より」、星織ユメミライの同タイトルOP(こちらはどんまるさんとの共作)といったエロゲを中心とした楽曲、アニメではCharlotteといったVisual Arts関係の楽曲を手がけていて、自分はそういう類の曲が好きだった。だから「World Hitchhiker! 2」で繰り返し聴いていたのは、エロゲOPEDの提供曲であり、新規書き下ろしの「新世界のα」はあまり聴いていなかった。しかも尻切れ蜻蛉な終わり方をするので、聴き終わったときのカタルシスが感じられないのも、当時の私にとって不満だった。

 

そんなこんなでこの楽曲ごと記憶の隅に追いやられて2020年となった。そこからの3,4年間というものの、ミリマスやデレステの楽曲にハマり、みっくを応援し始め、ふとした縁でEndorfin.を追いかけて、本当にこのアルバムの存在自体忘れてしまっていたと思う。(サインももらったはずなのにね)

 

そんな2020年のある日、「新世界のα」は「アインシュタインより愛を込めて」のOP1として再度世に姿を現した。シナリオは新島さん。3年前の曲とこうした機縁でまた出会い、懐かしさとともに、「すでに3年以上前から計画されていたのか」という驚きを含め、壮大な伏線回収のようなものを感じ心が躍った。「シナリオから曲を着想するのではなく、曲からシナリオを着想させる」と評されていたが、まさにその通りで曲→ストーリーという展開は珍しいと思った。「3月2日月曜日」つまり2020年にその日を迎え、当時はよくわからなかった抽象的な歌詞も、愛内周太と有村ロミの物語として肉付けされて、その全貌が明らかになる。

さすがに3.4年も前の曲であり、シナリオ制作と並行して作られたと思われるからストーリーとの齟齬はあるかもしれない。しかし「新世界のα」をEDでも持ってきており、この曲の主題が繰り返し重要な意味を持っていることを示唆させる。その意味で制作者たちの「新世界のα」に対する力の入れ方は凄まじいと思う。

 

かつシナリオを辿りながら、改めて歌詞を見つめると、新島さんの筆致の鋭さがこれでもかと伝わってくる。「新世界のα」の魅力はエモーショルで疾走感ある竹下節と、この新島さんの言葉紡ぎの巧さにあると思う。シナリオライターだからってこともあるけど、口語的で一つ一つの言葉に無駄が無く、メロディーと合わせた時にそのフレーズが軽快に、そしてダイレクトに心に届く。爽快感とともに場面がめくるめく展開し、アイこめの物語に導く。

彼のシナリオを取っても、その世界観や構成自体に賛否両論はあれど(恋カケはそれで炎上したけど)、ワンシーンワンシーンの描き方は本当に丁寧で、ダイレクトに心情の機微がプレイヤーに伝わるのは否定できないと思う。「人間臭さ」といえば野暮だけど、真っ直ぐにそれを描こうとするその態度は、この「新世界のα」を契機に展開するアイこめは勿論、恋カケや魔女こいにっき、8年前のはつゆきさくらにも貫かれているものかと。

われわれは答えの出ない問題に愚直に探し続けなければならない。ゴーギャンのいうように「われわれはどこから来て、どこに行くのか」、たとい問いが消滅したとしても、新たに問いを打ち立て問い続けなければならない。きっとそういうふうにしか生きられない。そんな気がする。

 

2. Lyrics・影

私がここでうだうだ書くのは、お世話になった方の言葉を使うなら、「新世界のα」の物語の実像ではなくである。「アイこめ」のストーリーやセリフをなるべく触れずに見ていきたいと思う。ただの要素の指摘、素材の発見を目的とするため、たどり着くところはまったくの前提・序論でしかないことは留意していただきたい。

 

構成はA→B→サビ→A→B→C→落ちサビ→coda。こんな中途半端な構成をしている曲も中々ないと思う。落ちサビからのcodaへの突然の移行は衝撃的で聴きどころ。

 

歌詞の物語のアウトラインを追うと、新世界の扉を開くか、閉じて新世界からさよならするか、後者を選択し名残惜しげに別れる、というふうに理解できる。1番Aメロの「3月2日月曜日 賑やかな夜」coda「6月◯日 月曜日 よく晴れた朝」と絵日記のように時系列を示し両端を合わせる。その中、で2番AメロBメロで本筋とは一見関係ない話が挿入される。そしてキーワードとして「神話」が登場する。これは1番サビ、2番Aメロ、落ちサビ、codaと要所要所計4回繰り返される。

 

以上のように複雑な要素を織り交ぜながら、新世界とさよならする、という筋書きが新世界のαである。

 

1番Aメロ、Bメロは「新世界のα」のプロローグである。

3月2日月曜日 賑やかな夜 ラジオに紛れ そっとビート刻む 誰も気づかない とてもかすかにそれは始まる」(Aメロ)

幾億年の時を越え その続きへ 光にのって 不思議な出来事に 僕らはためらったね 途方もないことがおきている」(Aメロ)

音波の洪水の中に 泳ぐ君を見つけたよ あわい影だけの姿 何かをもとめ 手を伸ばす」(Bメロ)

この内1番BメロはCメロと対になっている。一方でこの現象は壮大なものを認識させるが、この「あわい影」は誰にも気づかれない。つまりこの物語の当事者のみの問題として終始し外界からは閉ざされる。ここでの「君」の存在は、海に潜む魚群や宇宙を流浪する人工衛星のよう。

 

サビはこの曲の「新世界の扉を開くか」という主題を打ち出す。(2番サビは引用割愛)

新世界のドア開け 真っ白い夢にのって いくつもの海こえて 強くなれるよ 優しくなれる 誰より皆知ってる 神話のよう」(1番サビ)

「君」に対する力強く頼もしいメッセージが響く。新世界のドアを開けること、それを起因に優しさを手に入れ人々の苦しみから解放させる。一種の夢物語のようである。そしてそれは「皆知ってる神話のよう」だと。普遍性をもつ「神話」である。

 

2番A,Bは物語の筋を脱線しながら如何にも新島さんらしい場面が展開される。

デパートのすみにいる よくわからない動物 そいつがなにか 僕にもわからない 皆それが好きだから 手に入れてみた 神話みたいなものさ」(1番Aメロ)
毎晩 眠る前には 恋とか人生について語ろう なんだかんだ楽しいぜ 夢はふくらみ 歩き出す」(2番Bメロ)
2つのシーンから構成されているが、1番とは打って変わって素朴な日常である。ここだけ「新世界のα」の中でもカラーが違う。1番では当事者のみの問題を取り扱いながら、2番では周りに迎合するような様子が窺える。「皆それが好きだから手に入れてみた/神話みたいなものさ」と分けることができるが、自分でもよく理解していないものを購入した口実として「神話」を援用している。大衆幻想としての神話をここでは指しているか。ちょっとカッコつけたこと言っているのがこの曲のアクセントとなってて聞き飽きない。

 

そしてCメロで物語の終末を暗示させ、「新世界のα」の雰囲気がガラッと変わる

ある朝ふと気づく 流れるラジオの中で まどろみ続ける君が ノイズの中にかき消えた

1番で提示された「君」がここで消える。出会いと別れが夜と朝と対になっているのが、切ない一夜の物語のような心地がする。途中インストがピアノだけになっているところが物悲しい。こういった緩急のつけ方が竹下さんらしい。

 

ギターソロを抜けた先に落ちサビが出現する。1番、2番サビとは真逆の光景が描かれる。

「新世界のドア閉じ 神話を置き去りに そんなにたよりない 君が1人で 終わりない旅に出るならどうかどうか 幸運を

ここはWorld Hitchhiker! 2の帯にも付されており、アルバム全体の、そしてこの「新世界のα」のキラーフレーズである。自分もここが一番好きだ。そしてあれだけ繰り返された「神話」から離れることになる。あくまで落ちサビでの「神話」は新世界の産物であることが暗示される。あの幸せな夢物語から切り離される。現実の「ありふれた世界」に戻ってしまう。

そして「君」ともバイバイすることになる。「どうかどうか幸運を」旅に出る者に、二度と巡り合うことのない者に"Pax intrantibus, salus exeuntibus."*1と伝えること、サヨナラダケガ人生ダ。切なさは募っていく。ピアノのサウンドが全面に押し出され、codaに向けて高揚感を助長する。

 

こういった類の別れはやはり作詞者らしさを象徴する。人生でまたと巡り合うことのないほど、2人は似た者同士なのだろう。やさぐれていてもどこか正直でまっすぐであり、お互いの苦しみを理解し合うし舐め合うし戯れ合う。でも絶望的な障壁が2人を阻む、同じものを見ていたはずなのに、別々のものを描いてしまう。いやそれは必然でもある。似た者同士だからこそお互いのちょっとした差異が、究極的な断絶があることを認識させてしまうから。自責的で似た者同士だから、「相手の幸せのために」とかいう身勝手な幻想を言い訳に、それぞれtragicな結末を追いかけてしまうのかもしれない。2人はこれ以上ない理解者だが、結ばれることはない。

だからこそ、こうした断絶を契機として2人は2人にしか辿り着けない境地へとたどり着く。「セカイ系」とはまさにそういうことではないのか。そこには現実を見据えすぎたがために形而上の理論を、ままならぬ現実に徹底的に打ち立てた、あのストイシズム*2の要素が浮かび上がる。「はつゆきさくら」OP: Presto(作詞はKOTOKOさん)が「強がりな哲学者」と初雪や桜に対して読み込む所以がここにあると思われる。

 

それを踏まえラスサビでは
6月◯日 月曜日 よく晴れた朝 2人だけが知る神話が終わる 街角に立ち尽くしながら
ありふれた世界に枯れるまで叫んだよ

「神話」が2人だけのものに置き換わる。「ありふれた世界」=現実に引き戻されてしまう。ここのストリングスの甲高い響きがクライマックスであることを示す。そして

さよならα さよならα さよなら

と意味深な言葉を叫び物語はここでストップする。 

 

問題はこのαの意味である。「さよなら」が修飾しているのだからαは「新世界」の存在である。そして一般的にαはΩと対比して「始まり」や、方程式の一般解を指す。これを当てはめれば「新世界の答え」「新世界の始まり」となろうし、それを手放すことが「新世界のα」の帰結である。なるほど、確かにアイこめの物語とも整合的である。

 

しかし、同時に想起させるのは恋カケの「さよならアルファコロン」である。「新世界のα」は他ゲームのモチーフすら入れているのではないか。そうすればこの曲はアイこめだけに限らなず、もっと幅の広い物語を包摂しているのではないか。たとえば、アイこめの忍√を洸太朗と星奏の物語の反転と位置付ける解釈があるが、「新世界のα」は前作と地続きの関係にあるのではないだろうか。

 

その可能性を予期した時、まずは「新世界のα」のを追わなければならない。アイこめという具象を脇に置いて、純粋に歌詞や構成、筆致を見ていくことで、つまり一旦アイこめ発売前までリセットすることで、物語の土台を見据えること、それで初めてこの曲の位置付けを知れると思ったからだ。*3

 

その過程で、「新世界のα」に漂う新島さんらしい鬱ENDの痕跡を見出しながらも、計4回も繰り返された「神話」という特殊な層を見出すことができ、それが楽曲全体のストーリーに重要な役割を響かせていることがわかる。

そしてこの「神話」には大別すると全体にかかる「神話」(1番サビ 2番A)、二人だけの「神話」(coda)に別れる。落ちサビの「神話」は新世界の神話となるが、前者後者どちらとも取れるだろう。新世界の要素を強調するなら、前者に傾き、「君」とのさよならを強調するなら、後者に傾く。また全体にかかる「神話」にもニュアンスが多少異なり、1番サビは「皆知ってる 神話のよう」とおとぎ話のような理想論を述べるような形で、2番Aメロは「神話みたいなものさ」と皆が共有している共同幻想みたいな(本来のミソジニー的なニュアンスにおいて)「神話」をシニカルに提示する。codaの「神話」はまさしく2人だけの大切な思い出、「セカイ系」のそれである。

 

4箇所において、以上の「神話」の使い方がそれぞれ異なるのがやはり「新世界のα」の魅力だと思われる。目まぐるしくその意義を変貌させながら物語を展開し、「さよならα」の叫びで締めくくる。口語調で描かれるプロットを、竹下さんの琴線に触れるメロディラインと、爽快なアレンジで軽やかに表現され、聞き手に物語に対する高揚感をもたらす。改めて2017年に世に出た曲だが、その具体的な作品「アイこめ」によってvividに描かれ、あえてそこから離れることで新島さんの筆致の巧さや他作品を含めた(あくまで)「方向性」を見ることができたと勝手ながら思う。

 

3. おわりに

OP2: 「Answer」(Vo. ducaさん)も「新世界のα」と同じ布陣で制作されており、こちらも本当に素晴らしい。特にBメロの低音が効果的に表現され、力強くて鋭い新島さんの歌詞とマッチしていて心が躍る。同時に3年経って独立を果たして、竹下さんのメロディーの幅も格段に広がってて「新世界のα」とはまた違う様相を呈しているのが本当にいい。

また他の新島さん作詞の曲も好きだ。特に魔女こいにっきのED「永遠の魔法使い」は童貞泣かせの情け容赦ない鋭い言葉で描かれている。プレイヤーの自意識を突っつくような感じで。ファンタジー要素に彩られながらも、その内実は非常に冷徹で強い自己意識によって駆動していることが、どこか素敵なのだと。

 

ラフスケッチですが、何かの役に立てば幸甚です。(不要であれば消します)

 

ともあれ2020年は大変だった。コロナで色々と激変してしまった。でも2019年と変わらないのは、自意識が全面に出た曲がやはり好きだということか。自意識なんてそんなもの、探したり守ったりしても何の得にはならないけどね、とも感じた1年でした。

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発売日(?)に買った時竹下さんにもらったサイン。3年前?なのかな。

 

アイこめのヒロインとそっくりな名前の人が知り合いにいるからこれ書いてるときめっちゃ恥ずかしかったのは内緒

 

 

 

*1:訪れる者に安らぎを、去りゆく者に安全を

*2:例えば恋カケにストイックの要素を見出す見解として

lamsakeerog.hatenadiary.jp

作品を生み出すという姿勢はまさにストイックそのものだろう。アイこめの文脈でいうならばロミの「他者の交流を通して魂を強化すること」がそれに当たりそうである。魂の強化という概念はストイシズムの根本であるが、その手段として他者との交流に力点を置いていること、それが今作のメインになっていることは位置付け的に重要である。

しかし、私は上述の通り、ストイシズム→セカイ系の連続性を措定した上で新世界のαにその要素を読み込んでいるが、仮にアイこめにそれを当て嵌めたとしたら思いっきり矛盾する可能性がある。他者との交流による魂の強化は、そもそも君と僕で完結し社会等を徹底的に切り離すセカイ系の見方と噛み合わない。むしろセカイの袋小路から逃れる端緒を作り出す。

では辻褄をどう合わせるか。苦し紛れの詭弁だが、セカイ系の図式によって齎されるエネルギー_これがストイシズムの力点となるが、を加速させながらも同時に、その自意識の傲慢さを認識するという根本的な矛盾を孕む。そしてこの冷めた自意識が勝利し、セカイ系の枠組みは自壊する。しかしエネルギーはそのまま保たれ、それぞれ別方向に流れていく。つまり2人は別れ結ばれることはないが、それでもずっと思い続ける仲となる。こんな形ではないか。第三者には受け入れられない「神話」=メルヘンであろう。

ストイシズムの図式を援用すれば、「新世界」とは2つの意味を持つ。劇中の世界の真理と、2人が遭遇してしまったセカイと。

*3:例えば5chのアイこめ感想スレ(ボロクソに叩かれている)で「新世界のα」の「君」って周太なのかロミなのかどっちやみたいなレスがあったが、その比定ですら辻褄合わせができないのである。

ItknkR(棗いつき+藍月なくる) Collaboration Album『Eufolie』(IKNR-01)の感想

ItknkR(いつき+月なくる) Collaboration Album『Eufolie』(IKNR-01)の感想です。

 

新曲は「パライソ・パライソ」「Eufolie」「愛に飢えたケダモノ」の3曲、そして「アプルフィリアの秘め事」と「As you wish, My lady」のいつきんくるカバー2曲。計5曲で構成されています。作詞作曲陣が「あ、◯◯で見たことある!」ってくらい本当に豪華で最高。

 

新曲群(3曲)は、今までいつきさんやなくるさんの出した歴代のアルバムとは構成が多少違っています。互いに騙し騙されほよりほよられながら堕ちてゆく「ドロッドロ共依存百合」というストーリーテーマを、いくつかのワードを共有しながら、それぞれの作詞作曲者が描く、そういった多面的な造りになっています。特に「虚飾」「」「」やそれらに準ずるワードは3曲すべてに表されています。ねじ式さん、いつきさん、かぼちゃさん、歌詞は基本的に同じ情景や世界観を指していても、ニュアンスというか、モチーフの使い方が異なっていて作詞作曲者特有のセンスが光るのもいい。全体的に主観的な要素を大きく孕むのもこのアルバムの特徴の一つ。今までのアルバム収録曲って、Nacollectionように1曲1曲違うテーマが与えられているか、もしくはJelLaboratoryやElis' dogmaのストーリー仕立てになっているか、この2択だったので、このような構成は何気に初なのでは?と。勿論ItknkR(いつきんくる)としてアルバム出すのは初なんですけれどもね。

 

アルバムジャケットについて、いつきさんとなくるさんの立ち絵のデザインがそのまま使われていて一目でご本人たちとわかります。眼福...!。M3開催日がいいね欄になってたりとちょっと凝ったところがあって素敵ですね。「M3で出すんだ」って気概が見て取れます。

今回もすごい盛況で、1時間くらい外まで列が伸びてて凄かったです。お二人と交流もできて、いや本当にいいイベントですね。

そんな前提はさて置きここから本題へ。

 

 

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1 パライソ・パライソ

 作詞作曲ねじ式さん。そういえばいつきんくるで「ピニャコラーダ」のカバーありましたね。あの時よりも表現できる音域の幅は広がっているな...と。

 

ミドルテンポで3分半、表題曲というわけでもなく、本アルバムの中で一番短い曲です。表題曲を最初に持ってくるのがデフォルトだと思いますが(もしくは最後に)、そうではなく表題曲を2番目に、このパライソ・パライソを1番目に持ってきていて、アルバムとしてはかなり珍しい構成となっています。

 

一方で曲調は至って単純で、A→サビ→A→サビ→B→サビ。Aメロが反復され強調される。他の新曲と比べツインボーカルの掛け合いがなく、かなり平坦に聞こえる。変化・展開に乏しいけれどラスサビ前のメロディーは好き。半音ずつが下っていく感じがよき。他2曲がかなり癖の強い曲だから、最初にこのような纏まってて落ち着いた曲が選ばれたのかもしれない。

 

偽造した愛の言葉」「虚像を積み上げて飾ったつもりが」「厭と言えない檻の中」「火傷なら勲章と呼べるほどに」など「虚飾」「」「」といったキーワードを散りばめることで、アルバムの世界観の呈示を果たしています。趣としてはピニャコラーダに似ている。さらに他2曲と比べても特にこの曲は、感情の機微を最小限のワードで描いています。一方ワードそれ自体は主観的要素を孕み(例えばサビの歌詞、「嗜虐心」とそれに連なる「卑劣」や「破廉恥」もか)、かつ状況を断片的に捉えて描いているため、ストーリーはわかるようでわからないような構成になっています。とはいえ前述のように、互いに堕ちてゆく「ドロッドロ共依存百合」という本筋は見て取れ、攻めと受けでそれぞれのパートを分けていて、割とリアリティのある情景に落とし込めているのかな...と感じます。言葉少なめな分、アニメーションで世界観を補強している部分はあります。

 

特に「火傷なら勲章と呼べるほどに」ってとこや「薔薇(バラ)撒く棘は蜜の味」がいい味出していますね。彼岸花バラのモチーフはこの曲の本アルバムにおける特殊性を表していています(次の2曲も同じストーリーを共有しつつも、それぞれ別のモチーフを加えています)

 

いざこう聴いてみるといつきさんとなくるさんで全然歌い方が違うのでその対比が非常に面白いです。いつきさんは結構抑揚はっきりとした表現に、なくるさんはどちらかといえば繊細にフラットな感じで、多分曲調的にしっとり目に歌い上げるのがいいと思うけど、それだけじゃ味気ないので互いに違う表現で歌い上げるのが最適解かな

 

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過去の歌ってみた動画(ピニャコラーダ)

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2 Eufolie

euphorie(多幸感)+folie(狂気) 仏語(ないし英語)の造語(なおfolieの発音記号はfɔ.liなのでeの発音は本来ない) こんなドロドロとした百合物語には相応しいですね。

 

作曲はかそかそさん、作詞はいつきさん、これまたミドルテンポな曲かなと思いきや、jazzyでかなりハイテンポノンストップで駆け上がるような複雑な曲。特にサビが最高に恍惚感があっていいですね。「二人甘く香るEufolie」までのメロディーの畳み掛けは盛り上がります。Aメロの「HEAVEN or HELL」「RAISE or CALL」といったコーラスの使い方がいいですね。

一方パートメロディも工夫が凝らされていて、特に1番Bメロのなくるさんパートは変化に富んでて好きです。「約束された結末に」で音程が跳ね上がるのがいい。

A→B→サビ→A’→B’→サビ→C→落ちサビ(半音下げ?)→サビ、特にB’は完全にBとは別物で、これ歌うの大変だったろうな...と感じます。テクニックとリズム感を相当要求しますよね。でもliveで歌うと物凄く楽しそうだし決まりそう。

 

先述のテーマ性を踏襲しながら、ギャンブル的要素を入れ込んでいます。スート、Bet、raise or call、オールインといった駆け引きの象徴たるポーカーを素材としながら、そこにブラフ・ポーカーフェイスという「虚飾」を結び付けています。このテンポ感、目眩く展開するゲームに相性バッチリやなと感じます。駆け引きは全曲「パライソ・パライソ」にもその要素を響かせますが、Eufolieはそれをゲームと明示しており、よりはっきりしているのがええなあと。

 

最大の聴きどころは畳み掛けるようなCメロですかね。ゲームから引き摺り下ろされて剥き出しの欲望が両パート相まって、ドロッドロ共依存って感じが伝わります。なお3曲目はこれをさらに過激にさせているので...

落ちサビ→ラスサビにかけて、「二人檻の中 ああ 鍵を失くしていたの」はキーが下がっている分もの哀しさを感じます。そしてお互いこのゲームの勝敗すら「狡猾に飾られたフェイク」であることに気づく、この堕ちていく感じ、いいですね。

 

言葉遊びを所々使用した曲でもある(特にサビ)ので是非歌詞カードを確認してもろて。ギミックが盛り沢山で、ツインボーカルでしか表せないと思います。

今回のアルバムの中で一番衝撃を受けた曲です。作詞してたらいつの間にか表題曲になってたのもわかる

 

3 愛に飢えたケダモノ

作詞作曲かぼちゃさんの楽曲。絶対何かあると感じさせるラインナップ。なこれ2の「ジョカパレ」やなこれ3の「Lilith」に引き続きって感じです。大概えっちな曲になる。

A→B→サビ→A→B→サビ→C→ラスサビと前曲の「Eufolie」と比べ展開は複雑でない。けれども、全体的に艶っぽい印象を感じさせます。サビ自体はjazzyで落ち着いたテイストだけど、歌詞が異様にエグくて浮揚感のような、不思議な心地がします。

 

まあ歌詞がぶっ飛んでて、とりあえずかぼちゃさんだからそうか...というのが歌詞カード見た時の感想。1番2番Aメロは明らかな背景描写、そこから二人の身体へと焦点を合わせていく。1番Bメロは「嫉妬深いのも 知られるのも 屈辱で」と「パライソ・パライソ」「Eufolie」のストーリーを踏襲しながら進んでいき、そしてサビで「愛に飢えたケダモノ 首輪に鍵をかけ 共食いで餌付けして 飼い馴らせば」とかなり過激な方向に進めています。これサビで持ってくるか、という。ただこれ以上にアカン歌詞が散見されるの、本当にコンプラ的に大丈夫だったんですかね...。共食いって表現いいですよね。性欲の昂り→ケダモノって繋がりなんですかね。それに首輪調教。サドっぽい世界だ(適当)。

 

2番の方が直截的に二人へと迫っています。1番よりも2番の方が個人的には好き。「栞挿したままの小説」を引き合いに出して「二人だけ世界」を導き出すのは、残酷な独占欲が醸し出されていていいですね。そりゃ小説が読み終わらなければ、その世界は永遠に続くわけですから。

続けて2番Bメロの「気付けばあんなにいた友人からも孤立して 独占欲が牙を剥いて」は共感しかない。今までの2曲ではあまり意識されなかった内縁/外縁がここで表現されています。外部の人間関係を徹底的に捨象することによって現れる、剥き出しの独占欲、「檻」というモチーフが先鋭的に形作られ生々しさを感じます。ドロッドロ共依存の幕開けです。

 

Cメロはまさしく「共依存の檻」の中で互いに「躾けしあう」というこの世の終わりみたいな状況へと繋がっていきます。それ以上は確実にコンプラに引っかかりそうな歌詞でほよ(割愛)

ここの6連符もジャズらしくていいですね。もっと積極的に3連符や6.7連符を使ってもろて()

 

そしてラスサビは1番に比べ「愛に飢えたケダモノ 首輪に鍵失くし 共食いで餌付けして 飼い殺した」とああもう戻れないんだなぁ...と。互いに性欲を貪り尽くせるまで貪り尽くす、欲求の彼方へ無限に突っ込んでいく感じがEufolieとは比べものにならないくらい高揚感、恍惚感を与えてくれます。

ただし過激であれクドくない表現に落とし込んでいるのはバランス取れてていいですね。abyss(某陵辱ゲーの曲)に似た歌詞やなあと思いました。(こちらも色々アウトな隠語が散見されていいですよ)

またツインボーカル曲ってことで、「天国で泣いた/監獄で泣いた」(1番サビ)、「囚人にされてた/主人にされてた」(2番サビ)「救われ/巣食われ」(同)「一人で泣いた/二人で泣いた」(ラスサビ)と歌詞を互いに変えていて奥行き・立体感ができています。特に最後、一人なのか二人なのか、孤独なのか依存なのか、含みをもたせた幕引きをしているのはいい。

 

歌に関して、なくるさんは高い声はもとより、低い声も綺麗に安定して音出せるようになったなあ...とAメロ聴いてて思います。いつきさんもベースがしっかりしているので、ハモらせた時の安定感と存在感が丁度いい。ただエグい世界観ながら、楽曲自体は、気品がありかつ繊細なメロディーという構成になっているので、歌声での表情の付け方で聴こえ方は随分変わると思います。そういった耽美な部分を如何に演出するかは重要かと。

 

ただ暴力の実現だけが人間の至高のイメージを満たすものなのである... となれば唯一獰猛な犬の貪欲さだけが、何にも制約されない人間の激情を完全に実現することなのかもしれない。

 

Georges Bataille 『サドの至高者』

 

4 アプルフィリアの秘め事 cover

5年前でしたっけ... 元々はなくるさんの曲ですがいつきさんのカバー版です。自分自身非常に好きな曲でしたのでこれには大喜びでした。一方元から「完成された」曲ではあるので中々どう歌うか難しいだろうな...と感じます。

 

といいつつもいつきさん色は全面に出ていて(ちょいロリっぽい?)、伸びやかでパワフルで普通にアリですね。サビの最後あたりとか明瞭に言葉が聞き取れるのは原曲にはないポイントかと。原曲と甲乙付け難いほど非常に素敵に仕上がってます。「跪きなさい」のいつきさんverが聴けるのは本当にご褒美。後言うとしたら微妙なニュアンスというか、表現の解釈をもっと推し進めればより独自性は増すのかな。

 

5 As you my wish, My lady  cover

こちらは元々いつきさんの楽曲。作曲lilyさんなのでなくるさんにはぴったりのカバーだったのかも。ただ本当に難しい(後述)

歌声のトーンはなくるさんにしては低め(基本今回のアルバムの曲では低いですが)。何かのサイトに男の子のボイスあげていたと思うんですが、それを思い出しました。実際この曲の主人公は男の子ですし雰囲気めっちゃ合ってると思います。普通に格好いい。原曲とは違い、最後のサビで音程あげてるのはいいですね。自分はカバーverのアレンジの方が好きです。

 

そのまま歌うと単調めになってしまいがちですので、1番と2番とで表現を変えたり、ドラマ性を意識させたい。Bメロとか結構早口だしメロディを潰してはいけないので滑舌はよくしていかなければならない、そもそも全体的に休憩がないので歌い切るのが大変、この2点を踏まえた上でドラマ性を考えていかなければならないので、本当に難しい曲です。なくちゃにとっては苦手な感じの曲だろうなあと。

 

でも非常にトリッキーながら歌詞が非常にいいので、いつきさん以外にも歌って欲しかった曲でしたので個人的にこのカバーはおいしいです。

 

カバーされた2曲とも作詞ゆーりさんなんですね。このくらいの過激さが自分は一番しっくりしますね。しみみ集合って感じで感慨深い(謎)です。

 

2曲の歌詞については以下参照。

pon-hide0228.hatenablog.com

 

 

最後に

万人受けが「パライソ・パライソ」、アルバムのキラーチューンであり最もダイナミックなのが表題曲「Eufolie」、これからも怪しい輝きを放ち続けるだろうダークホース的な曲が「愛に飢えたケダモノ」、そして往年のいつきんくるファンにブッ刺さるカバー2曲と、バリエーションに富んでて(世界観が色々終わっていること以外は)バランスの取れたアルバムだったんじゃないかと思います。世界観が尖っていて人を選びそうだけど、それぞれのアーティスト(作詞・作曲者)のテーマに対する「切り取り方」が垣間見えるのがいい。

それとM3直前放送無茶苦茶面白いのでみんな見てもろて。

 

 

www.youtube.com

 

 

Nacollection-3- 感想

本来5月中の夏コミで頒布予定だった作品。しかし例のあやつのせいで中止となり作品も発売延期...その中でパワーアップした「なこれ3」が遂に7/9発売されました!

 

なこれの魅力は様々なジャンルの楽曲を通していろんななくるさんの姿を楽しめる点にあるのではないかなと思います。Endorfin.のアルバムや一昨年のJelLaboratoryはある一定の題材をモチーフとしている以上、基本的にはそのストーリーをなぞることに力点が置かれますから、どうしても一曲一曲を単体として聴くのがなこれより相対的に難しくなるんですよね。

 

初コラボとなる作曲家さんとの楽曲にも、今まで提供してきた信頼ある作曲家さんとの楽曲両方とも楽しめるのも、藍月なくるプロデュースアルバムならではの魅力があります。特に最後の2曲に今までとは一風変わった曲が入っているところがいいですね。

 

前回のNacollection!! 2がすでに2年半前!そこから歌声、表現力、技量、何もかも遥かにパワーアップしたなくるさんに注目して聴いていきましょう!!

 

(ここから先ガンガンネタバレあります。)

 

nacolle3.tumblr.com

 

youtu.be

 

 

 

1 Azura Luno

メン限で先行公開された曲。曲名の発表があった時「あ、なくるさんのそのものの表題曲やん!」と一発で感じました。タイトルはまさに「藍月」。随所にご本人のモチーフが散りばめられています。まだ他の楽曲が公開されてない頃、ここまで属人的な曲はAzura Lunoだけっしょと思ってたら、そんなことなかった。恐るべきなこれ3

 

作詞作曲はRD soundさん。例えばLa prière「それは世界を越えて」でほよ民の間では知られていますね。Azura Lunoもそれは世界を越えてと同じくストーリー仕立てになっていて、綺麗に物語っているところがいいですね。

 

なおAzura Lunoには原型となった曲が存在していて「Heart-shaped chant」(水樹奈々)だそう。エレガの楽曲だったんですね。

 

ストーリーの骨子に沿ってAzura Lunoを見ていきます。

まずこの楽曲では言葉」と「うた」のテーゼを対比的に捉えながら、時空を横軸にして展開し、その中で「うた」を託された存在が月のように歌い明かす、そんな世界観になっています。まさにこの託された存在というのがなくるさんであり、そのための舞台装置として「言葉」「うた」「太古より続く物語」を配置し、ご本人の存在感が浮き彫りにまるで讃えるかのようになっています。

 

引き立てるこれらの要素は具体的には以下のように展開され関連付けられます。

 

1番Aメロ

すべてのはじまりは「言葉」だというだろう  思い伝え語り継ぐ  それがなくるものかと

けれどそれより  或いはそのずっと前に  思い伝え語る「うた」言葉ではなく

2番Bメロ

けれどきっとそれは  胸の中に眠っている  形もたぬ夢幻  それがなくるものかと

だからだれしも  言葉飾るそれが前に  思い伝え語る「うた」  空の何処かへ

 

「すべてのはじまりは言葉」は例えば新約聖書初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった」を想起させます。言語の起源は哲学史において長く議論されてきたテーマでもあり、歌という営為もまたその起源について考えられてきたものです。ここでは言葉より先んじて「うた」が存在していたことを示し、言語に還元しえない思いを歌い上げる、そしてそれが「天へと  昇らせ」、「すべて  輝かせてゆける」(2番Bメロ)とつなげていきます。言語との対象性を持たない茫漠たる思い、それが「なくるもの」として表現されています。(むしろ言葉がなければ語り明かすことはできないのでは...と思わなくもないですが)

 

また落ちサビを引き立たせるCメロでも上記と同じ枠組みが再提示され、「遥か  丘向こうへ吹く風  万年の砂礫なる宝石  嘗ては人知れず「言葉」にもならぬ夢」が「夜空照らす形なさず  なくるものかと」と風、宝石、夢という形で具体性を帯びています。ここの畳み掛けが盛り上がるんですよね。それから後の間奏もまたよき。

 

サビの表現がこれまた素敵で「この名前」をタイトルであるAzura Lunoと読ませています。

例えば

Azura Luno  わたしがこうしてここに立つとき  その物語よ  産声も高く」(1番サビ)

Azura Luno   わたしがそれを空に告ぐるとき  その物語よ  また積み重なる」(2番サビ)

そして落ちサビでは

そうしていつか  はじめに  ある「言葉」よりも先に  この物語は 始まっていたのだろう

かくしていつか  おわりの  ない「うた」を託されては  夜が来る限り昇り続ける・・・

としてモチーフの繰り替えされ、月と「わたし」(=なくるさん)を重ね合わせた形で登場します。世界観の提示と主人公の出現、そこの構成が綺麗に整っていていいなと思います。

 

この物語において、最もご本人の存在感が浮き彫りになるのはやはり

満天の星空を従え 夜の淵まで歌い明かせ」(ラスサビ)

でしょうか。月と星々は本来同時には見られない存在です。月が輝くほど星々はその明るさに隠れます(つまり満天の夜空の時は新月に近い)。ただ星々を統べ歌い続ける姿は、なくるさんらしくていい。

 

このように壮大な世界観の中で月のようにたおやかに、パワフルに歌い切っているところがこの曲の魅力です。なくるさんの歌い方って可愛らしさの中に力強さやエッチさがあって素敵なんですよね。最初のコーラスからラスサビまで、なこれ2よりも深みを増した歌声で表現されています。音の紡ぎ方に無駄がなくなって、ムラが圧倒的に昔の作品よりも少なくなっています。一つ一つの音や動機(モチーフ)をしっかり意識して表現できるくらい、レベルアップされてて応援してて本当に嬉しいところです。中世のミンネジンガーのような姿を投影し、ここまで壮大な物語を紡ぐのはどこか確固たる意志みたいなものを感じさせます。多分、なこれ2では絶対に歌えなかったかと。

 

ただAzura Lunoって何語なんですかね?言葉としては人工言語のイドが2単語に当てはまりそうですが。多分音で選んだ説が一番強そう()この楽曲の発表直後そんな話が周りで繰り広げられてましたね。ちなみに仏語にするとLa Lune Azurée

 

仮歌は棗いつきさん。こちらのバージョンも大変優れていていいですね。特にサビのAzura Lunoの表現がなくるさんと全く違うのでそこが対照的で一度で二度美味しいって感じ。メン限で流されましたので是非。

2 メリーメリーゴーランド

作曲はlapixさん、作詞はゆーりさん、soleil de Minuitと同じクリエイターやん!ということで一番楽しみにしていた曲。奇を衒わずひたすら常道を貫くようなメロディーが聴いてて楽しいですね。やっぱなくるさんといえばこんな感じのお洒落な曲っしょ!と思い出させてくれます。割とクセの強い楽曲が揃っているなこれ3の中で、一番ニュートラルで人に勧められる曲だなって感じです。

 

遊園地デートに鼓動高鳴りながらも、待ちわびてる時や未来のことを思うと不安が見え隠れする、甘酸っぱい曲です。1番は待ち合わせの途中、2番はデート中かな? 中々ここ最近のゆーりさんにはなかった感じの歌詞です。だけどモチーフの使い方が性癖ドンピシャで安定して綺麗な歌詞だなと感じます。

 

そしてタイトルのメリーゴーランドからもわかるように「回る」を軸としてお話が展開されています。歌詞カードでは「回る」がくるくるして、遊び心があるのもなこれ3の仕掛けの素晴らしさ。

 

Aメロの心情表現も大変いいのですが、Bメロがいいアクセントになってます。

キミが スキよ スキよ スキよ

 はやく きてよ きてよ きてよ

 わたし ココで 待って いるよ

 だから」(1番Bメロ)

口ずさみたくなるようなリズム感があっていいんですよね。このようなリフレインは例えばCadeau de Dieuで見られます。(2番Bメロの「なんで」がな゛ん゛で゛ぇ゛に変換されるのはきっと気のせい)

 

サビはほんとに王道って感じでぐるぐる回る恋心を時計の針やメリーゴーランド、観覧車に象徴させています。

ねえ近づいてるの?  遠ざかってるの? キミとわたしの距離感 星をすり抜け回る回る 観覧車みたいね」(2番サビ ラスサビ)

キミとわたしで回る回るメリーゴーランドみたいに」(ラスサビ)

が最高ですね。星をすり抜けるって夜空に浮かぶ月とか惑星とかそんなものかな。確かに観覧車っぽい軌道を描くよなあって気がします。

 

なくるさんの曲の中では割と低めの声かな。ファルセット大好きマンだからアレだけど、可愛らしさと大人っぽさを上手い塩梅で詰め込んだ声でいいですね。楽曲の度に違う姿が見えます。そこがなこれの面白さであり、なくるさんらしさであるわけで。

 

ちなみにメリーメリーゴーランドの作詞のゆーりさんとのコラボ曲が7/7に配信されました(こちらはアルバム未収録)。タイトルは「七月のヘリオグラフ」。七夕神話を下敷きとした綺麗な楽曲なので是非。

 

七月のヘリオグラフは↓ 何気にゆーりさんとなくるさんのツインボーカルは初?

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3 わたしがわたしに至った10の理由

久しぶりのLilyさん電波曲。ソロだとわがままモザイク以来かな。(キミに馳せるスクープに収録されてます「次の情報です」は妃苺さんとのコラボ)。なこれ2だと「その名はRendezvous」とかが好きですね。電波曲のプロってイメージです。曲の略称は「わた10(わたてん)」

 

アルバムに収録されている歌詞カードは実はyoutubeの本気verの方。本アルバム収録版は途中のセリフがかなり違います。個人的にはなこれ3バージョンが好きですね。セリフが浮っついている感じがいつものなくるさんらしくていいです(なこ虐じゃないよ)。またちょっとぶっきらぼうな方がより最後の部分で心にグッときます。

 

さてタイトルの10の理由ですが、10個のキャラを演じ分けています。この時点でやることが半端ないです。キャラ設定は順に「ツンデレ」「ドジっ子」「メイドさん」「ヤンデレ」「病弱」「無表情」「ヤンキー女子」「お姉さん」「不思議ちゃん」そして一番重要な「普通」。確かにご本人の配信を観て洗脳されていると、メイドさん:「ご主人様、次の御命令を(アルバムverは「ご、御命令ください!ご主人様!」)からの「休まされました」は非常によく理解できます。上に挙げられたキャラとどうもなくるさん本人と乖離しているところがある種この曲の肝となっています(むしろ不思議ちゃんが一番あってる説ある)。またそれぞれアレンジが違っていたり歌詞カードの字体を変えたりと凝っています。まあキャラと演じるご本人の性格をまぜこぜしちゃいけないって発想も(小説とかでも作品に作者の人格やらを見出すなって話に似てる)ありますが、この曲はそういった視点を通すことによって楽しめる楽曲だと思うので、その意味でもなこれらしいです。

 

そして最後を飾るケース10「普通」がこれまで9個のケースをめぐる中での一つの到達点となっています。「アリな雰囲気だけど  意図した純粋さだから  う〜んなんか違うんだよなぁ」が特に好きで、「意図した純粋さ」ってところがまさになくるさんを象徴するワードだなと。清楚っぽい(清楚ではない)に通じるものがありますが、そこが魅力なんですよ(もちろん褒め言葉)。

 

サビの歌詞の変化もまたエモい。「1回くらい振り向いて」→「10回と言わず振り向いて!」→「たった1回振り向いて!」とキャラを辿っていくうちに脳回路絡まってショートしたり、「わたしの気持ち」が解ってきたり、そして最後は等身大、ありのままの自分を受け入れる、その過程がものすごく琴線に触れます。ラスサビで転調するのもエモーショナルでいい。

 

この曲は本当にこれまで追い続けたファンには何もかも刺さるんじゃないんですか?なくるさんが配信を始めて、その中で色々なイメージが生み出されては既存のイメージが壊れていったりして(サイコパスだったりほよ野郎だったり様々)、でも何か可愛らしくって謎に真面目で飽きさせない魅力があって。私もあれこんな人だったんだ、えぇ...って多分796回くらい思ったんですけど、今なおこうやって曲を聴いているわけですし。そこを余すところなく最高な形で描き切っているところが最強ですね。あれファンがこの曲かいた?って感じるくらい、我々の思いとシンクロしてて電波曲なのに泣けます。「その全て抱きしめてかわいいって教えてくれたんだ」ってとこでグッときました。Azura Lunoがなくるさんの代名詞とするならば、この曲はなくるさんの歩んだ道のりを描いているというか。

 

歌詞カードのイラストが超絶可愛い上に2pまるまる描かれているので大変ボリューミーです。なおLilithやフェイクも同じく2pイラスト付きです。イラストレーターさんもそれぞれ違うので豪華で最強だなと思います。

 

最後に、youtubeの本気verはまさに圧巻の一言。やっぱり上手いです(声優としてのなくるさんの活躍にも期待です)。いつかの不定期彼女を思い出します。youtubeの方の映像を見ることで初めてこの楽曲の魅力が伝わると思うんで是非とも。「風邪引いた経験ないし......今のも若干嘘だし」ってところで「ほよ?」と出しているところが打点高いです。藍月なくるじゃんって感じです。10個のキャラの演じ分け本当にうまいのに、でもちょっと笑ってしまうのはほよ民の性ですか?結構属人的な曲だけど、他の声優さんが演技力検定って形で歌ってみてもおもしろそう。

 

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4 Lilith

twitterで度々出ていたエッチソングとはこのこと。リリスって神話上の女性ですね、悪魔というか魔女というか。作曲はジョーカーパレードのかぼちゃさん。何となく予感はしていました。前評判通り歌詞は色々と過激です。ただ最後はちょっぴり切ない。ジャズっぽい、全体的に感情・劣情をひたすら揺す振り続けるような、そんな楽曲です。こんな小悪魔っぽい感じの曲は「monochrome butterfly」や「その名はRendezvous」とかありましたけど、ここまでエッチなのはなかったですね。なお副題は「転生したらエッチなサキュバスと世界を統べることになった件」

 

元ネタは賭ケグルイOP「deal with the devil」(Tia)だそう。

 

Would you like to have fun with me?

楽しいことやっちゃわない?って感じですかこれ。挑発的な文面から始まります。その後のピアノサウンドがまたジャズさがあって好みなんですよね、過激なナンバーはジャズで味付けするのが一番です(謎理論)。

 

1番の歌詞はLilithのおでましって感じでしょうか。どうも造られた悪魔っぽい?

What do you want? フラスコの中の悪魔が微笑う (baby tell me tell me)

anything you want 叶えてあげるわこの魔法で (Sign this contract, now here!)」(Aメロ)

フラスコの中の悪魔はホムンクルス(フラスコの中の小人)を想起させます。Bメロで造られた存在であることが伝えられます。同時に長く生きられないし力が尽きれば消えると...

 

最初にドキッとするのはサビに入る前のBメロですね。

二人の 邪魔する アイツら 片付けましょう

ブレスの切り方がやっぱえっちなんですよね... これも才能といいますか。なお2番の方はもっとすごいことになっててはえ〜...って感じです(語彙力皆無)

 

そしてサビはもうやりたい放題。ああここまで入っているのは多分初めてじゃないのでしょうか。最高すぎるので全文載っけて見てみます。

もっと もっと もっと 私を感じさせて この手であれもこれもそれも壊したい

 扇情的な 気持ちいい命令をちょうだい おあずけじゃイヤぁっ

 もっと もっと もっと 手強い敵(ヤツ)がいいわ 溢れる魔力(ちから)抑えきれず暴れたい

 刺激的な 濡れちゃう戦闘(プレイ)をちょうだい 逝きたいの

 快楽に その願い しゃぶりつくすわ ねぇいいでしょう?

いざ文面にするとやっぱりやばいです。もっと×3のとこの情感は半端ないです(タケ○トピアノのCMとか言わない) 。単純なメロディの繰り返し+畳み掛けが最大限なくるさんのボイスにマッチしていて勢いがあります。淫魔というか何というか、ここまで直接的なの大丈夫だったんか...と思います。そしてここで外出中だと恥ずかしくなって聴くのをやめる。

ただ1番で散りばめられた要素が別の意味で最後伏線回収されることになります。ただのえっちソングではないんですよLilithは。

 

2番も2番でやりたい放題、よりぶっとんでます。劣情やら嫉妬心を煽るのが本当にうまいですね。本当になくるさん?(確認) 例えば2番Bメロ

私ってばモテるの 追手がすぐに来るわ 悩んでる間に誰かに 奪られちゃう なんてね?どこにも 行かないわ

この太字の部分がセリフなんですけど、急にこれ来るからドキッてなりますよね。結構セクシーな声出せたんですね。お姉さん役ASMRお待ちしております(こういう役今までなくるさんにあったっけ?って素朴な興味もありますが)。

っとふざけましたが、わた10と同じく器用に声色を使いこなすことができるのって天賦の才だと思います。生放送のなくるさんのイメージがここ最近は先行しますが、やっぱすごい方なんだなって引き戻してくれます。

 

2番サビも1番と同じく過激に畳み掛けます。「もっと もっと もっと 私を使役(つか)ってみて」であったり「死んだって構わないわ 命を 魔力(ちから)に換え暴れ続けたい」であったり、傲慢で高飛車で欲望を徹底的に貪り尽くそうとする悪魔ですが、その次の落ちサビで急展開を迎えます。

 

落ちサビはどうやらこの悪魔を創った男の命が危うくなった模様。「私はどうだっていいわ 魔力を 生命に換えあなた生かすわ」落ちサビ特有のバックミュージックの寂寥感がより切なさを助長し、切迫した様子を伝えます。ちょっと前まで快楽に浸っていたのに... ここで「命令違反」ってワードが出てくるのやっぱりエモいですね。そりゃこの男の本望ではないでしょうから。

ここから1番の歌詞とは真逆の歌詞が続きます。「あなた以外 あれもこれもそれも欲しくない」ってのはまさにそれを端的に表しています。

 

そして「愛してるって言ってよねぇ」がこの曲の一番の盛り上がりです。サビの中だとここだけセリフ。曲の世界観が爆速で展開される中、ここまで迫真のセリフをねじ込むことが余力がある上に、非常に切迫したリアルな表現ができるのは、声優の本領発揮ですね。ここら辺の表現の使い分けが綺麗になされているところはやっぱりすごいなと。煽情的で刺激的なのに泣けます。その後「願いを力に変え人は生きるの 忘れないで あなたの中でずっと 生きたいの」と続けます。1番サビの「逝きたいの」とは真逆です。この切ない終わりに1番の歌詞と対比させているのは、楽曲としても、物語としても素敵。

 

最後の「快楽に この命 しゃぶりつくすわ ねぇいいでしょう?」もそのような文脈で見ると、決して性的消費に収まる話ではないです。直前の「願いを力に変え人は生きるの」って部分は何となくなこれ3全体にも、なくるさんが携わった幾多の曲にも当てはまるんじゃないのかなと思います。

 

かなり早口な感じだけど、すごいなくるさんの調子にぴったり合ってるというか、最大限に魅力が伝わっているのでこういう過激な曲増えてください(願望)

 

イラストはえか先生!アルバムの中に先生のイラストが載るのっていつぶりかな。歌詞カードを開いたとき、一番驚きました。Lilithのhの先が矢印になってるの、何でかなと思ってたらアレ悪魔のことだったんですね。可愛らしさがギュッと詰まってるんで是非

 

5 フェイク

こちらは4/1にエイプリルフール企画としてyoutubeで公開になった曲。ふぇりさんとなくるさん、最強の2人とはこのことで。

 

なこれ3の中では一番カッコいい曲になってるなと思います。ジョカパレ最初に聴いた時と同じ衝撃ですね。「解ってんならさっさと征け!」とかほんとになくるさんが歌っている?って感じになります。曲調は乖離光に非常によく似ています。作曲のFeryquitousさんが好きなコード進行だそうで(twitterの質問箱参照)。まあ無機質な曲調こそがFeryquitousさんの真骨頂であり、抜群にキレのある楽曲になってるんじゃないのかな。Identismの頃から聴いてますが、その時よりも格段になくるさんの表現力の上がっているんですよね。

 

曲調は過去の楽曲と似ていますが、歌詞は今まであまりなかったストーリー仕立てとなっています。内容はフェリさんらしくよくわからない... ただフェイクの動画のモチーフ-大量のテレビが積み重なってブルースクリーンになっている情景から、どこかペルソナ4ぽいかなって気がします。確かなくるさんペルソナシリーズ好きだったはず。

 

冒頭部分、告白文体で始まります。これ誰目線なんですかね... ただまあ告白文体ってなくるさんの曲だと珍しいので思わずおお話はどうなるんだ!?って聴き入ってしまいますね。

「そうだ、君には言えなかった話、」

「僕がまだ名も無き日の頃に」

「鉄塔の陰を踏み倒しながら重ねた嘘が」

「心残りなんだまだ自分でも、解っていないが」

「今ここで、全てを」

「打ち明けようと思う。」

フェイクから本物の自分に当てた一種の告白だと思われます。途中の『それじゃあ、君は誰?』応答している本物の自分ですかね。基本的にはフェイク目線での一人舞台だと思って差し支えないかと思います。そうすると最後「そうさ本物はこの僕さ」は偽物が本物に成り代わったことになります。すり変わりというか合一というか、そこを物語の基軸として考えるのがスタートラインかなあと。

 

ことが混沌としているので、あくまでモチーフとされたものについて触れていきます。テレビという要素からペルソナ4を経由して「もう一人の自分」(=ペルソナないしフェイク)の存在を想起させます。本物とフェイクの合一という要素に矛盾なく説明できる仮説だろうと思います。

空欄にセーブ

→ 古典的なテレビゲームの要素を後景に配置しているのではないか

並列のフェイク

→ 記録されたが上書きされることのなかったセーブデータの数々

仮のエスケープ

→ 一時保存

前にも見た事があったな。」「あの時もこんな四畳半だった。」「確かそうあの背中は、この机に躓いていた。

→ ゲームに何度もやり直した面をデジャヴのような形で象徴しているか、何度も自分の分身たるプレイヤーを使ってやり直している様子を思い出しているか。

本物のアーカイブ

→ 並列のフェイクの中で唯一エンディングを迎えられたセーブデータでしょうか。

 

ただ何が本物で、何がフェイクなのかは非常に曖昧で相対的なものであるため、誰がどの立場なのかは判然としません。また上記のモチーフがそのままAメロBメロに繋がるとは思えませんし微妙なところではあります。

 

この曲の公開後フェイク君の謎設定だったり、実はこれマイナンバーカード通知カード落とした話なんじゃねとか色々と2次創作が生まれた意味で愛されてます。新たなキャラクターとしてフェイク君を世に出した意義はでかいなあと

 

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他の考察について、しあんさんやすとねさん、土蜘蛛さんのを参考にさせていただきました。ありがとうございます。(何か問題があればお伝えください) 

 

 

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6 Folded Wings 

satellaさん楽曲提供は初?と思いきやIrithがありました。 えんどる的な爽やかさを彷彿とさせながら、何となくギャルゲーっぽい感じの曲です。曲タイトルの意味は「折りたたまれた羽」って感じでしょうかね。

 

全体の流れとしてはかなり転調が激しくて幻想的、中々最初はピンとこなかったんですけど、Aメロのピアノサウンドが気持ちいいし、要所要所のストリングスもいいですね。

 

Aメロは多少ネガティブな感じです。ただその要素を塗り替えるようにBメロサビまで、翼を広げて駆け抜ける感じが特徴的です。

舞い上がれ 想いのまま 風を駆け抜けて 切り開いた 未来が 二人の場所へ いつか導いて」(1番サビ ラスサビ)

たとえ翅失くして  闇に飲まれても  君が見守ってる  さあ広がる明日へと」(Cメロ)

このサビ部分がとても爽やかで気持ちいいんですよ。非常に変則的な曲調なんですけどコーラスを交じ合わせながら、まるで風を切るように伸びやかにメロディが進むんですよね。ビブラートを多用しているところは今のなくるさんだからこそ。

 

この折り畳まれた「」ってところからモチーフはちょうちょなんですかね。翅というワード自体はガラスアゲハでも登場してます。

 

(元ネタはやなぎなぎさんの「カザキリ」だそう。)

7 whisper 

高城みよさんの作詞作曲を聴くのは初。最初聞いた時カービィ夢の泉のBGM(レインボーリゾートのような)的な、3拍子の楽曲だなって思いました。速さはワルツ感ある。アルバムの最後にこのようなほんわかした曲を入れるのはいいですね。

 

コーラスの合わせ方がほんとにセンスが光ってて好きです。今まであまり無かったコーラスをなこれ3では結構使っていますが、一番綺麗にできているなと。Azura Lunaのような大曲とは違い、このような小曲もまたいいんですよ。3拍子の綺麗なリズムになくるさんの全てがつまっています。

 

この楽曲一番の魅力は作詞です。多少モチーフが散らかっている気もしますが非常に綺麗です。境界線で挟まれた空と海をつなげ合わせるような不思議な歌詞です。例えば冒頭とラストで繰り返される「空を泳ぐ鳥と何もない果てを探してる」ってところは若山牧水の「空の青海のあをにも染まずただよふ」という情景を彷彿とさせます。

 

AメロBメロはそれぞれ街の情景を描き出しています。「崩れかけの壁」「錆び付いた歯車」などの表現はどこか人が離れて荒廃しきったような様子が、しかしそれでも、「誰も居なくても」街を動かし続けているのでどこかディストピア感があります。それを背景として窓から空を眺め余情を歌う、そんな感じですね。歌詞カードでも三日月、それらを臨む白いレースカーテンが描かれやはり楽曲の世界観を忠実に表しているなあと感じます。

 

表現が最も綺麗なのは、サビです。

きらめく星を切り取って  波打つ影を飾りましょう  風に靡いた夜色の  ドレスに身を包んで」(1番サビ)

夢を纏った  指先で 私の愛を描きましょう  鈍く光った箱舟に  そっと想いを乗せて」(2番サビ)

揺らめく月を掬い上げ 静かな夜を飾りましょう  闇に揺蕩う銀色の 海月に身を任せて」(ラスサビ)

1番サビでは天上の星々を海へ、ラスサビでは逆に海に映る月を天上へ、やってることは全知全能な感じがしますが、そこが地平線を挟んだ海と星空の余情をよく謳っているなと思います。そしてラスサビの「海月」は突然出てきます。なこれの世界観を完全に踏襲していますね(そうでなきゃいきなり出てこない)。小曲であるのにも関わらず、なくるさんの要素を全面に押し出し「夢を纏って  指先で 私の愛を描きましょう」などAzura Lunoに負けず劣らず全知全能な姿が演出されているのは本当に素晴らしいです。Azura Lunoで月と歌を、そしてWhisperでそれらと海月を混ぜ合わせていて、最初と最後が非常に綺麗に仕上がっており、Nacollection-3-いう物語を引き立たせています。最高でしょ

 

さいごに

全体的に歌い上げる難易度が高い楽曲ばかりで、かなり挑戦的だなと思いました。特に「わたしがわたしに至った10の理由」は非常にハイテンポであれだけの歌詞を詰め込むのはかなりきついのでは... さらになくるさんの今までの軌跡を想起させる属人性の高い楽曲でもあり、割とプレッシャーも大きかったのでは?と勝手に思ってます。(高度な演技分けを要求される楽曲でもあるので違う声優さんが歌ったらどうなるんやってのは気になる) 

 

さらに他の楽曲も、メロディーを追いかけるのが難しいFolded Wingsやら、表現の切り替えが激しく扇情的なLilith、フェリさんらしいメロディの畳み掛けが特徴的なフェイク、本当に高い表現力を要求されるものばっかでしたので、わあこれはすごい(小並感)ってところです。

 

改めてなこれ2から幾年月経ち、パワーアップしたなくるさんを拝むことができました。感想を書いてて、やっぱり昔と同じようには感動を味わえるわけではないですが、どんな姿であれ、持っている才覚や能力は砕けないものであることを再確認しました。

素晴らしいイラストに囲まれた藍月なくるを象徴する楽曲群に改めて心を預けるとき、そこには無数の記憶を宿した素敵な世界が広がっていること、何より、行き交う年月の中で偶然なくるさんの存在を知り、その存在に人生を賭けて、結果的に色々なファンの方々と一緒にその活躍を応援できること、その全てを大事な思い出として、誇りに思えます。

 

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